罪の味は蜜の味…夜食食べたの誰だ?
寝息を確認…忍び足でキッチンへ
深夜12時すぎ。妻の寝息を確認して、キッチンに忍び込む。湯を沸かしてカップ麺を作り、リビングで音をたてないよう麺をすする。すると突然、後ろで「ガタッ」と音がした。飛び上がって振り返ると、テレビのリモコンが机から落ちただけ。ああ命拾い。
こんなに恐る恐る夜食を食べるようになったのは、いつからだろう。受験生当時は母がよく夜中にチャーハンを作ってくれた。一人暮らし時代は夜食天国。おなかが「グゥ~」と鳴ればコンビニへ出かけ、菓子や炭酸飲料を買いあさった。
だが、結婚が全てを変えた。新婚のある晩、残り物のギョーザをつまみに夜更けの一杯を始めたら、妻は「信じられない」とつぶやき凍り付いた。以来、「あなたの健康のため」と夜食は禁止。深夜のカップ麺は明らかな裏切り行為だ。
だが、最近はその罪の味に魅了され、余計にやめられなくなったと思う。だいたい月1、2回、夜食を食べたところで、健康にさして悪影響はない。要は見つからなければいいのさ。
翌朝、空のカップ容器を押し込んだゴミ袋を手に玄関のドアを開ける。まさにその瞬間、背中から「何か食べたな」と妻の冷たい声……。振り向かず、逃げるように家を飛び出した。
太らないなんてずるい
帰宅して時計を見ると、もう午後10時。夕方におにぎりを1つかじり、アメなどを食べただけ。「遅いけれど、夕飯をちゃんと食べていないし」。だれともなく言い訳をし、ひとくちご飯を食べたら、もう止まらない。炭水化物を中心に、あっという間におなかはいっぱい。
ああ、今日も最悪のパターン。夜中に、しかも満腹食べてしまうなんて。部屋が散らかっていたり、子どもがけんかしていたりすると、さらに食欲は増す。
食事は眠る3時間前には終える、夜は炭水化物を控えるといった女子っぽいフレーズは思い出すが、ストレスの前に吹き飛ぶ。夜遅くの炭水化物は、体に悪いが、心にはこの上ないスイーツなのだ。
でも、夫がいると、別。「もう10時だよ。明日にしたら?」と制止され、ご飯はお預けだ。加えて納得いかないことが2つ。かくいう夫は夜、アイスクリームやチョコレートをぱくぱく食べている。しかも太らない。なんとずるい……。
「夜食べ過ぎると体に悪いよ。また写真を見たくないなんて言い出すんだから、夕飯をしっかり食べなよ」。いちいちごもっとも。すきっ腹を抱え、明朝は今夜の分のご飯も食べるぞと心に決めて寝る。
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