会社の命令か自分磨きか…英語能力試験受けた?
今回から、20代の新たなキャラクターが登場します。プロフィールはこちら
頑張り方、間違ってる?
「あなたの点数が楽しみ。頑張ってね」。その日、カミさんはいつになく優しく送り出してくれた。向かうは英語能力テスト「TOEIC」の試験会場。仕事の関係で受験を求められ、やむなく初挑戦した。
会場となっている大学に行くとそこは学生ばかり。談笑する彼らを横目にそそくさと教室に入ると、同じようなオジサンが数人、席についていた。一瞬バチッと目が合う。だが、あいさつの余裕はない。四半世紀ぶりのテストを前にまず黙想して精神統一。子どもから借りたアニメキャラクターの絵柄の筆箱から鉛筆を全部出して並べ、転がらないように消しゴムでおさえる。受験票を置き、机に書かれた番号と合っているか何度も確かめる……。
そんなことをやっていたら、やがて外にいた学生たちも入ってきた。さらに試験開始が近づいたころ、30歳くらいの女性がささっと斜め隣の席についた。いかにも慣れた様子で、こじゃれたシャーペンを机に置いている。
数週間後に送られてきた試験結果を口外したくはない。のぞき見たカミさんはプッと噴き出していた。うーん、誰よりも頑張ったつもりなんだけどなあ。
自分試しは楽しく
「問題集はどれがいい? 当日は早めに着いた方がいいよね」「……」
TOEICを初めて受ける上司はここ数日、経験者の私に質問攻めだ。「テストなんて就職試験以来」と不安そう。大丈夫かな。
大学時代からよく受けている私は、友達と行くこともある。2、3時間のことだし、勉強の成果が出なければ、また受けようと気楽に考える。ところが男性には切羽詰まった人が……。
先日の中国語検定でもそうだった。試験前に鉛筆を机に丁寧に並べるのは、たいてい年配の男性。リスニングの試験中に何度もせき払いをする人もいた。いらついたけれど、あの緊張ぶりでは仕方ないのかな。
最近は英語を公用語にする会社が現れ、職場が受験を求めることも多い。将来がかかると感じる人はいるだろう。でも、外国語は点数より使えてなんぼ。一発勝負のはずがない。
少しからかいたくなって、「試験後はどこに行くんですか。私なら友達と夕食かな」と尋ねると、上司は「不真面目な」と言わんばかりの表情で席に戻っていった。もっとリラックスしないと、実力を発揮できませんよー。
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