あなたは捨てられる? 引っ越し荷物の戦い
無用の長物が増えていく
荷造りで真っ先に考えるのは、とにかく不要な物を捨てること。ゴミ袋にどんどん放りこんでいく作業は意外に楽しい。だが時々、妻の「査察」が入り、子どもの壊れたおもちゃ、ぬいぐるみなどが処分を免れていく。引っ越しのたびに思うのだが、どうして彼女は捨てられないのかな。
絶対に着ることのないマタニティーウエアや、着ればボタンがはじけ飛びそうなワンピースが段ボール箱に収まっていくのを見て、トラックのガソリンを無駄に使う気がしてならないが本人には言わない。その代わり、使わなくなった古いパソコン数台を段ボール箱に詰めこむことを容認してもらっている。何回かの引っ越しを経て、我が家にはいろんな暗黙の合意ができてきているのだ。
荷物運びで少し体を痛めると、いつになく妻が優しく、世話をしてくれる。なるほど、僕が見捨てられないのも、彼女の性癖のおかげかな。かくして夫婦仲は円満となり、我が家には無用の長物が増えていく。
生きた証しは捨てられない
引っ越しの荷造りを始めようと、衣装ケースを開けてみれば、何年も袖を通さずにいる服がたんまりとある。処分すれば容量は3分の1ぐらいになる。着もしない服のために、せっせと替える防湿・防虫剤の費用もばかにならない。だけど服は捨てられない。
それなりの金額だったから、思い出があるから、やせれば着られるから。詰まるところ、捨てられない理由はこんなところか。恐ろしいことに、高校生のときに着ていたベルボトムまで1本残っていて、我ながらあきれてしまう。これって女のサガっていうやつ?
いや、待てよ。捨てられない男だっている。アニメのフィギュアを集めるアキバ系、鉄道モノなら何でも来いの鉄ちゃん。ジャイアンツグッズに目がない友人もいた。観戦に行ってはスタンドに投げ込まれるサインボール獲得に躍起となるから、同じ選手のボールが部屋にごろごろあると言っていた。う~ん、ご苦労。
要するにそれぞれの生きた証しなのだ。服がそれにあたる女は多い。荷物ではなく私自身なのだから捨てられるはずがない。そんな気持ち、男性陣にもわかるんじゃない。
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