今年は何をしでかしてくれるの? 拝啓、新入社員さま
来てくれるだけでありがたい
今年も新人がやってくる。初々しい顔の新しい仲間が、今年は何をしでかしてくれるか楽しみだ。
僕の場合は遅刻だった。歓迎会で慣れない酒を飲み、気づけば午前10時、布団の中。取引先との約束に遅れる失態だ。あわてて駆けつけ「申し訳ありません」と頭を下げる。すると先輩と取引先の人がにんまり笑って言った。
「まあ、落ち着いてお茶でも飲めよ」
以来20年、何度となく失敗はしたが、めげずに働いてきた。「失敗に学び、次に成功させることを考えろ」。先輩のひと言がそう教えてくれたからだ。
近ごろは「3年3割」というほど若手はすぐ会社を辞めると聞く。僕はやはり「石の上にも三年」と言いたい。仕事がつまらない。上司と合わない。理由はいろいろあるだろうが3年では失敗に学ぶ時間もない。
僕も今なお迷いを抱えている。昔は55歳で定年だったが、今は65歳まで働ける。仕事人生は長く、目的地は見えない。だから少しくたびれた身としては、失敗しながらも進む君たちを見ると元気がでる。職場にいるだけでありがたいよ。
もし辞めたいと思っても、まあ落ち着いてお茶でも飲めよ。職場へようこそ。
初めからできる仕事はない
「部長って何で私ばっかり怒るんだろう。もう仕事やめたい」
喫茶店でお茶をしていたとき、隣の2人組の会話が耳に入ってきた。
必ずいるのよね、会社がイヤって言い出す新入社員。はっきり言って、最初からできることなんてほとんどないのに。「もっとクリエイティブな仕事がしたい」とか「あの部署のほうが自分に合っている」とか。いったいどんな理想を描いて入社してきたのかしら。学生時代のサークルじゃないんだから、職場に苦手な人ぐらいいるのが普通よ。
でも、その気持ち、懐かしくもある。人事部から内定の電話をもらったときの驚きは今も忘れられない。その瞬間から、憧れの会社でかっこよく働く自分ばかりを思い描いたのに。
入社してお客様扱いされるのは最初だけ。失敗すれば叱られるし、おっかない先輩や上司だってたくさんいる。そのたびに親や友達にグチを聞いてもらったけれど、心は晴れなかった。
仕事の悩みは仕事の近くにいることでしか解決できないみたい。会社員人生は始まったばかり。隣の人に心の中でつぶやいた。焦らずゆっくりがんばろうよ。
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