女性にはいないって本当? 鍋奉行がやってきた
ほらっ、ひと味違うでしょ
我が家にも鍋の季節がやって来た。普段は妻に料理をほとんど任せっきりにしているが、この時期ばかりは僕の出番。寄せ鍋に鶏ちゃんこ、最近流行のトマト鍋だってお手の物だ。雑誌やネットでレシピを確認すれば、店よりおいしく作れる自信もある。
ダシを作り、肉や野菜をさらに盛り、鍋に投入。よい加減に煮えたところで器に取り分けるまで、すべてを取り仕切るのが僕なりのルール。だから、豆乳鍋に挑戦した先週末、妻に「野菜くらい切るわ」といわれたときも断ってしまった。
「まったく鍋奉行なんだから」とあきれ声の妻。でも最後には「あなたの鍋はひと味違う」と褒めてくれる。僕も本気を出せばきちんと料理ができるんだ。
思えば完全なる会社人間だった父も、かつては鍋奉行だった。普段は皿洗いも手伝わないくせに、年に1回だけはしゃいでいた。
高い肉を買い込み、下手くそな包丁使いでザクザク野菜を刻んでいた。食事が終わると母は「頼りになるわ」と褒めていたなぁ。
でも母と姉は裏で「男のままごと」と笑って話していたような……。あれっ、もしかして僕も同じこと言われてるの?
ひょっとして男の本能
鍋料理の飲み会で「食べて食べて」とせき立てる女友達がいる。具材を入れては勧めるの繰り返しで、気づけば本人はあまり食べていない。一つのダイエット法かと勘繰ってしまうほどだ。実は我が母親もそのタイプ。鍋物をすると箸を置く暇もない感じで、「自分のペースで食べさせて」とキレたこともあったっけ。
こういうのは鍋奉行とちょっと違う。まわりのために良かれと思ってやる、いわば世話焼きおばさんだ。一方、鍋奉行は味付けや具材の入れ方、食べる順序まで「これこそ正統派」とウンチクをたれながら、あれこれ仕切りたがる。つまり管理が好きなのだ。
「鍋奉行って、なんだか役目が与えられてうれしいのかも」。そう自己分析した後輩男子もいる。男はきっと管理者という役目を与えられるのが根っから好きなのだ。そうなるとどんな場面でも喜々として働く。もちろん食卓でも……。
その点、女はちがう。管理職になりたがらない女性が多いとよくいわれるが、管理するとかしないとか、女はそんな次元に生きちゃいない。あなたも振り返ってみるといい。ほら、鍋奉行に女はいないでしょ。
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