思い出づくりかダイエットか……店で料理を撮る?
味も思い出もおいしく
パシャパシャとシャッター音がテーブルのあちこちからあがる。レストランで女子会をすると必ず始まる料理の撮影タイム。皿が届くたびに「おいしそう」などと感想を述べながら、片手にはスマートフォン。撮らない人にお節介を焼く人までいる。
ホワイトデーにもらったお菓子、先輩と食べに行ったステーキの断面のアップ……。おかげでスマホに残る写真の半分近くは料理。よく撮ったものだと自分に感心してしまう。
交流サイト(SNS)やブログにアップする友達も多い。私はやらないけれど「あの店でこんなの食べた」と、写真で思い出を味わえるのは少しうれしい。次に店を利用する際の参考になるしね。
もちろん眉をひそめる人がいるのは知っている。だから店の人に確認するし、シャッター音を抑える工夫もしている。えっ、そこまでしてなぜ撮るかって?
考えてみればみんなで同じ写真を撮っているのよね。最近は似たような構図の写真ばかり増えた気もする。でも、おいしく味わって思い出の写真を残しておけば、食べたものの記録としてダイエットにも生かせる。スマホのよい使い方だと思うけどなあ。
最高の瞬間 味わいなさい
「ああ、また撮った」。妻とレストランに行くたびに、彼女の撮影タイムにウンザリする。メーンだけならまだしも、前菜・スープもスマホでパシャリ。料理が来るたびに食事が中断され、すぐに食べたい僕はイライラするばかり。
以前は、料理を撮影するのはマナー違反だった気がする。だが、最近は店員もあきらめたのか気にもとめない様子。今も罪悪感がある僕には「料理と一緒に撮って」と妻からスマホを渡されたときなどは最悪だ。妻への忠誠と紳士の道のどちらを取るか、踏み絵をさせられる気分だ。
もっともこの撮影癖、女性だけのものではない。最近、上司が一緒に行った居酒屋で出てきた焼き鳥と枝豆を撮っていた。「食べた料理を記録するレコーディングダイエット」。メモに書き残せば済むのに……。
僕の見るところ、思い出を形に残したい症候群がまん延している。でも、料理人はお客にその一皿を最高の瞬間に味わってもらうために腕を磨いているのだろう。撮影にかまけていると、その最高の瞬間の味わいを逃すことにならないか。やっぱり料理人に失礼な気がするなあ。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。