家にあふれる靴やバッグ 本当にそんなに必要?
まだ買うつもりですか
ある日、何気なく自宅の靴箱を開けてみて驚いた。5段ある棚の大部分が妻の靴で埋まっている。ハイヒールにバレエシューズ、サンダル、ブーツ、スニーカー……。いったい何足あるんだ。片隅には私の仕事用の革靴2足と休日用スニーカー1足が押し込まれていた。
もしやと思い、クローゼットを確認すると中には色とりどりのカバンが並んでいた。このうちの1~2個は結婚前に私がプレゼントしたものだが、大半は見覚えがない。いつの間に……。思わず「これ全部、使っているの?」と素朴な疑問を口にすると、妻が目をむいた。「当たり前じゃない!」
「あなたも自分のを買ったらいいのよ」。確かに底が擦り切れてきた仕事用カバンは買い替え時かもしれない。妻の強い勧めもあり、週末にデパートに来てみたものの、なかなか気に入った物は見つからない。なるべくならお気に入りのカバン1つを長く使いたいものだ。「また今度にするよ」と言って帰ろうとすると、妻は何だか不満そうだ。
帰り際、妻はショーウインドーに飾ってある女性用バッグを指さし「あれ、すてきね」と言う。何だ。私のカバンを買うというのは体のいい免罪符代わりだったのか。
分かってはいるけど
靴は一度に1足しか履けない。バッグもたいてい一つしかもたない。なのにまあ、なぜこんなにあるのかしら。靴箱やクローゼットを見て自分でも少々あきれる。
数足の高級靴や数個のバッグを手入れしながら丁寧に使うシンプルな生活を送る女性の本は何冊も読んだ。憧れるが、いざまねようと思うと「これは雪の日用」、「赤い靴は黒い服の差し色に使える」と、それぞれに必要と思える理由があるのだ。手放せるはずがない。
「黒い靴ばかりじゃないか」と夫は至極当然の指摘をする。でもヒールの高さや太さ、飾りの有無など全部違うデザインで、スカートやパンツの丈によって使い分けているのだ。
バッグだって同じ。用途別に種類は増える。整理するどころか「このバッグに合う靴がないな」と、眺めるうちに新たな購買意欲がかき立てられるから、あわててクローゼットを閉める始末だ。
だが最近、手ごわい取締官が現れた。娘だ。「そのバッグ見たことない。また買ったでしょ」。夫とは比べものにならない観察眼で見とがめ、「もったいない。たくさんあるのに」と説教してくる。娘の成長をこんな場面で実感するとは……。
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