せっかくの家族旅行 楽しみたいのに楽しくない
マイペース夫にイラッ
「あ~、またですか」。我が家の夏休みの旅は毎年、単独行動に走る夫のためにイライラの連続だ。計画を立て、飛行機やホテルの手配をするのは私と息子。夫に「どこに行きたい?」と聞けば「どこでも……」と気のない返事。現地に出掛けても、ガイドブック片手に懸命にプランを考えた家族の気持ちをまったく気にしない。
昨年、北イタリアに行った時は有名な教会の入り口で「ぼくはキリスト教に関心がないから」と中に入るのを拒否。「ここで待っている」と近くの石段に座っていた。美術館では「よくわからない」と有名絵画の前を素通りし、さっさと出口に向かった。
「お父さんなんか無視して楽しみましょ」と息子に言ったものの、せっかく来たのにと怒りがこみあげる。「いったい何に関心があるの」と聞くと「うーん、食とワインかなあ」なんて言う。それなら自分で計画を立てなさい。
とはいえ旅行がつまらないわけでもなさそうで、各地でビデオ撮影に没頭。帰ってから建物や街の風景などを1人で繰り返し見ている。「それなら現地でもっと盛り上がってくれてもいいのに」と言いたくなる。今年は息子たちが多忙。夫と2人の旅行で盛り下がるのは嫌だ。
任せた私のミス?
妻の仕事が音楽教室の講師なので、いつも我が家の夏休みは教室が休みになるお盆前後。旅行会社のパンフレットを比べても、ホテルやパック旅行は繁忙期の最高値だ。1回の大型レジャーでボーナスが吹き飛ぶこともある。
それでも何とか元を取ろうと、私が穴場の秘境などを見つけ出し、家族旅行を楽しむ工夫をしてきた。子どもが幼い頃は笑顔の見返りをもらったものだ。ただ仕事が超多忙だったある年、「じゃあ私が決めるわね」という妻に任せたのが悲劇の始まりだった。
「ポケモンジェットで行くグアム」。子どもの海外旅行デビューに妻が選んだツアーだ。ただ我が家は東京近郊なのに、なぜか羽田から関西空港を経由するので片道10時間もかかる。現地に着けば台風の影響で連日の雨。濁った海にちょっと入った後は、ホテルの流れるプールで3日間を過ごした。日系ホテルなので従業員は日本語がペラペラ。ほとんど英語を使うこともなく、ドルで買い物をした以外は海外旅行の気がしない。
帰国後、「貧乏くじを引いたな」と妻を皮肉ると「これしかなかったのよ」と口をとがらせた。娘は「日本のプールでよかったのに」とぽつり。いまだに妻からは反省の弁を聞いていない。
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