父の晩ご飯 特別扱いをしていますか?
気を利かせているのに
「僕も子どもと同じでいい」。帰宅した夫は食卓を見るなり言う。その日の夕食は子どもがオムライスで、夫と私はサケの西京漬けをメーンにした和食だったからだ。
子どものリクエストはハンバーグやタコライスなど、ボリュームのある洋食ばかり。だが夫はよく長期の海外出張に出掛ける。たまに日本にいるときぐらいは和食がいいだろうと私なりに気を利かせ、メーンを刺し身や焼き魚に変えたり、メーンは同じでも酢味噌あえなどを1品プラスしたりする。
私が子どものころ、母は家で飲む父のため刺し身などのつまみを別に用意していた。「お父さんはちょっと特別扱いなんだ」と思ったものだ。
だが夫は「家族みんなで同じものを食べたい」らしい。自分だけ別のおかずにしてもらうと手間がかかるからという。そこで最近は子どもと大人のメニューを分けて、私も和食にすることも多いが、なんだか不満げだ。
子どものオムライスは名前とハートや星マークをケチャップで描いて出す。いつだったか家族でオムライスを食べたとき、子どもが「パパのは普通で、つまんないね」と言っていた。まさか平等にしてほしいポイント、そこじゃないわよね。
妻の作戦勝ち?
甘口カレーにオムライス、ナポリタンスパゲティ……。子どもが離乳食を終えたころから、我が家は子ども向けの料理が中心になった。どれも決して嫌いではないが毎日続くとさすがに飽きるし、ケチャップ味のオムライスで飲むのもつらい。妻はもう1品作る気は全くなさそうだし、僕も無理に頼む勇気もない。
悩んだ末、簡単なことに気付いた。自分で作ればいいのだ。初心者だが、魚1匹を豪快に使ったアクアパッツァや、豚のブロック肉を紹興酒で煮込んだ角煮など本格的な料理で家族を驚かせたい。早速、書店でレシピ本を買い集め、台所でにらめっこする。
ところがレシピの表現は意外に不親切。「塩こしょう少々」って何グラム? 「さっとゆでる」はどれくらいゆでるのかなどと考えているうちに時間ばかりが過ぎる。「千切り」は何ミリだと半ば憤慨しながらやっていると、自分の指を切るオマケまで付いてきた。
「お父さん、まだ~?」。おなかをすかせた妻子の声がリビングから聞こえる。悪戦苦闘の結果、料理が完成。本格的とはいえないが、まあまあの出来栄えだ。妻から「おいしい」と褒められて有頂天になり「今度は何がいいかな」と思わず口走っていた。あれ、妻の策略にはまった?
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