ボーナスどうする? 好きに使いたいけど……
ニンジンないと走れない
今回も見送りか……。ネットでゴルフクラブを検索してはため息をつく。有名メーカーの最新ドライバー、1本約6万円。アベノミクスの恩恵か、今夏の我が社のボーナスは久しぶりに前年に比べ増えた。喜びをかみ殺しつつ妻に打診すると「なに言ってるの?」という返事。
住宅ローンの返済、子どもの教育費、エアコンの買い替え、月々の赤字の補填などと、あっという間に差し押さえられ、僕の手元に残るのは数万円。「今までにない飛びを実現!」というドライバーの宣伝コピーがまぶしい。
ボーナスで自由に使えるお金の額は毎年減る一方だ。一家を支える身としては仕方ない面もあるけど、社内の若手がうらやましい。「何に使うか決めるのが一苦労です」などと言って、ぜいたくな悩みだ。バブル期だった独身時代が懐かしいな。当時は会社も気前よかったし、ボーナスをすべて自分が好きに使えた。趣味のゴルフと音楽につぎ込めた時期はもう幻なのか。
確かに妻のおかげもあるけれど、ボーナスをもらったのは僕。毎日仕事で汗を流し、週末は家族サービスに努めた僕なんだから。ボーナスが増えたときくらいニンジンをもらえないと、馬だって走れないぞ。
決まらない使い道
待ちに待ったボーナスが出た。通帳をみながら頭をフル回転させる。まず友達との海外旅行。旅先のレストランで着る洋服も必要ね。ジムに通ってダイエットもしたいし、今度こそ英語をマスターして仕事に役立てたい。そうそう、部屋のカーテンも買い替えたいな。
上司は「全部自分のために使えて幸せだね」と言うが、尽きない欲と限りあるボーナスの間で折り合いをつけるのは大変だ。ノートに候補を書き出し、一つずつ検討していく。「旅行に15万円」「英会話は10万円」「カーテンは保留」。配分決めはさながら一人予算審議だ。
入社3年目だから毎月の給料はさほど多くない。今年の春先から一人暮らしを始めて、うっかり浪費すると生活費が心もとなくなるので、ボーナスは本当にありがたいわ。新人時代の夏の支給額は10万円にみたず、悩みに悩んでバッグだけを買ったけど、いまは使い道をあれこれ考えるくらいの額はもらえるようになった。
電卓をたたいて何に使うか決めかけたとき、母親からメールが届いた。「ボーナス出ましたか。一人暮らしを始めたころ立て替えてあげた家賃、よろしくね」。最初からやり直しだ……。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。