10年目のクールビズ 本当に楽になってる?
学生時代が懐かしい
クールビズが政府の音頭で始まって10年目。ノーネクタイの爽快を手に入れたはずが、もはや苦痛でしかない。地方へ出張すれば公務員のアロハシャツやかりゆし姿は当たり前だ。おしゃれ度は進化し、雑誌や新聞には「クールビズの掟(おきて)」という特集まで登場。普通の半袖シャツで出勤しようとすると「ダサいわね」と妻の冷たい視線を浴びる。
「ボタンダウンがすてきですね」。若い女子社員のお世辞に乗って、たまに近所のスーパーでクールビズウエアを物色する。が、妻の美的基準に達しないのか「私が買ってあげるわ」と郊外の百貨店に連れて行かれた。
クールビズは百貨店の新たな鉱脈に違いない。売り場に足を踏み入れた瞬間、年配の社員がいきなり現れた。整髪料で髪を立たせ、水色のジャケットに虹色のストライプ入りシャツ、グレーの細身ズボン。雑誌から飛び出したようにバッチリ決めている。
「お似合いな商品がありますよ」。ほとんど口を差し挟む余地もなく、年配社員と妻が選んでいく。「これ、いいわね」。セール品とはいえ、上から下までで約5万円。ちょっとした海外旅行1人分じゃないか。学ランで通せた学生時代が妙に懐かしい。
NG独り歩きしてない?
シャツは襟付き、ポロシャツは避ける――。クールビズのドレスコードは男のための「足かせ」ぐらいにしか思っていなかった。だが最近は「ミュール・生足NG」といった女性用コードも耳にする。ノースリーブやキャミソール、胸元の開きすぎ、かがんだときに下着が見える、膝上10センチ以上のミニスカートやショートパンツなどなど。「そりゃそうだ」と思うものもあるが「それもダメ?」と感じる例も少なくない。
なぜ素足がダメかといえば「営業職だと靴を脱いで家に上がることも多いから」。本来は業種によってNGコードが違うはずなのに、いつの間にか独り歩きして営業職以外にも広がっている。日本経済新聞社と集英社「マリソル」誌の合同調査では「くるぶしの上まで見えるクロップドパンツはNG」という声もあって、驚いた。だってスカートは、ふくらはぎまで見えるじゃない。
こんな状況、5~6年前はなかった。お気の毒な男の足かせのはずが、気付くと女にもはめられている。クールビズに限らず、最近は会社の決まり事が本当に増えた。なんだか窮屈さに慣らされていく感じ。それだけ放っておくと何でもできてしまう世の中だということでもあるが……。
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