司令塔は妻… 初売りは戦場だった
肉弾戦、男のパワーの見せどころ
正月といえば福袋。昔はそんなものに列をつくる女性の気持ちが理解できなかったが数年前、カミさんの荷物持ちで「参戦」してから変わった。正月の売り場は初詣の神社にも負けないほどにぎやかで、しかも安いから現世の御利益がいっぱいだ。ワイシャツや靴を新しくして新年の仕事に備えたいという「男心」をわしづかみにされる。
都内の某百貨店の列に早朝から並び、開店とともにダッシュする。目指すは紳士服売り場。普段は疲れている僕らミドル男性も、この時ばかりはまるでラグビー選手だ。猛然と獲物に向かう迫力は、バーゲンのワゴンに群がる女性たちより数段上だろう。「福袋は開封しないでください」と店員が声を張り上げる横で、構わず中身を見比べる猛者もいる。
奥さんに決定権を握られている人が結構いるのは、現場を見渡せばわかる。レジに並ぶ奥さんのところに追加したい袋を持っていき、「これもいい?」と飼い猫のようにゴロゴロする人もいる。却下されてもへこたれはしない。急いで次の獲物を捕獲してきてゴロゴロする。なんだ、ニッポンの男性は意外に元気ではないか。男性パワーを少し感じたひとときだった。
万全の準備 夢は見たけど…
1年の買い物の計は初売りにあり。狙いはクリスマスに我慢したワンピース、少し値のはる通勤バッグ。ショップには取材済みだし、店巡りのルートも研究し、準備は万全だった。なのに、この後悔はなに?
人混みが苦手の私も、この日ばかりはもみくちゃの戦場に飛び込んでいく。ごちゃごちゃの陳列からお宝を見つけ出すのは簡単ではないけれど、そこは執念。何とか手にした瞬間の喜びは何物にも代え難い。
問題はその後。目的を果たすと気持ちも財布のひももゆるみ、目前の品が次々ほしくなる。このジャケットはあのブローチが合いそう。この色のシャツはどんなメークで着る?
気づけば買い物カゴは満杯。戦利品の心地よい重さをかみしめながら家へ向かう。でも幸せはここまで。袖を通して鏡を見れば望み通りの品物なのに姿はちぐはぐ。思い描いた私じゃない。あのモデルみたいになれると思ったのに……。
来年こそ賢い買い物をしてみせる。リベンジを誓ってはみたものの、実は私は初売りで夢を見たいだけなのかも。とりあえず、このちくちくするセーターはネットオークション行きね。
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