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「子育て校長」だって悩んでいる

~ママ世代公募校長奮闘記(22) 山口照美

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NIKKEI STYLE

敷津小学校では、卒業式と新1年生を迎える準備で忙しい。同時に、我が家も長女の小学校入学を控えている。保育園の保護者会では、茶話会の担当だ。当日流す映像の編集をするため、すき間時間を捻出するのに苦労している。入学式が重なり、娘とはお互いに別の学校へ向かうことになる。せめてもの気持ちで、娘とおそろいの白のジャケットを着ようと思う。

この1年、公立小学校の校長としての立場と、1歳と6歳の子どもを抱える親の立場とで、悩ましかった。

お手本になれない悩み

学校や地域で差はあるだろうが、敷津小はPTAや地域との飲み会が多い。そこで得る情報もあるし、学校の応援団を増やすことも校長の仕事だ。しかし、続くと割り切れない日もある。保護者のお手本となるべき校長が、小さな子を家に置いて遅くまで飲んでいるのはいかがなものか。

女性の役割を固定しようという発想は無い。実際、私たち夫婦は男女の役割が世間とは逆だ。私がメインの稼ぎ手であり、夫が家事育児の担い手である。介護の仕事と自営業なので、時間のコントロールは私よりしやすい。だから、私が夜遅くても対応できる体制になっている。

そうは言っても、保育園児と親がゆっくり過ごす時間は貴重だ。ご飯、お風呂、明日の準備、歯磨き……と追い立てる過ごし方ではなく、「ゆっくり」過ごす。2人いた方が、余裕はできる。夫は奮闘してくれているものの、申し訳なくなることがある。

学校の運動場で子ども達と鬼ごっこをしたり、図書室で本を一緒にめくったり。

楽しい時間の後に、ふっと気持ちが揺らぐ。

自分の子と、本気でたっぷり遊んだのはいつだろう?

学校で働く多くの親が抱えてきた葛藤を、今まさに体験している校長は少ない。

その点では、教頭希望者が激減している大阪市で(原因に公募校長制度があることは申し訳なく思いつつ)、「子育て世代でも管理職になれる」仕事の仕方や制度変更の提案は、私の役目だと考えている。

就学直前に引っ越した理由

さて、娘の小学校進学を控え、親として私がしたことは「引っ越し」だった。校区を変わる目的だ。ただし、よりよい学習環境を求めてという転居ではない。それならば、引っ越し前の小学校のほうが人数もクラス数も少なく、目が行き届くだろう。

決断した理由は、保育園の子たちの多くが進学する小学校に私自身が通わせたかったからだ。

小学校の現場にいて、親同士のつながりを作る難しさを感じている。さまざまに声をかけ、PTAの方々も努力してくださっている。それでも、保育園の保護者会ほど濃密にはなれない。兄弟姉妹のように関わり合って育ち、互いに成長を喜び合ってきた親同士のつながりは、共働きの家庭にとって心強いものだ。

引っ越しの当日、子ども達を預ける先に困っていたら、気軽にママ友が預かってくれた。逆に、近くなったことでこちらが預かりやすくもなる。

そして、具体的な支援より、心理的な支えになっている面が多い。

「明日の遠足って何がいるの?」「あの行事、申し込んだ?」

気軽に質問できる相手がいるって、有り難い。姉や兄が先に進学している家庭からは、学校の様子を聞くこともできる。不安解消に、かなり役だった。

学童保育は定員オーバー!

しかし、どうしても解消できない悩みがある。引っ越したことにより、学童保育に入れなかったのだ。自治体には期日内に申し込み、転居に伴って書類も移動している。同じ条件で選考かと思っていたら、「締め切り後に申し込んだ家庭」という扱いになり、入れなかった。就学前の引っ越しは難しい。

現在、6人待ち。

1年生が5クラスもいて、申し込みが増えたそうだ。空きが出るまで、どうやって乗り切ろう。民間学童を見つけたが、スポット利用の数時間で6千円以上。頭が痛い。自分が住む自治体が掲げる「子育てするなら吹田」というキャッチコピーに、「どこがやねん」とツッコみたくなる。

大阪市内の小学校は、校内に「いきいき活動」と呼ばれる学童があり、6年生までいられる。しかし、吹田市では小学校3年生までしか入れない。その後は、塾通いや習い事を駆使するか、1人で留守番する形になる。だから4年生以降の覚悟はあったものの、まさか入れないとは。

今は担当者の「学童をすぐに出る人もいますしね~」という言葉に希望をつなぎながら、夫と次の手を考えなければならない。時短をとれるような職場でもなく、夫も介護のパートで抜けられない場面もある。

男女問わず、子育てしながらキャリアをつなぐことは、まだまだ、多くの人にとって困難だ。

「時間の価値」を上げるには?

1年前は、研修が始まっていたとは言え、私は自営業で仕事時間の調整がしやすかった。打ち合わせに出る日と、自宅で製作や執筆をする日と、講演で泊まりがけの出張をする日。講演以外は、融通が利いた。それだけに、仕事にメリハリをつけるのが難しく、深夜仕事が常態になっていた。今は、7時前に出勤し、20時前後に帰る。そのリズムが月曜から金曜まで。土日に行事が入るとしんどくなるが、休みに集中して家事をやるようになった。

休みが惜しい。予定を早めに決めて、充実させたい。以前より、夫を追い立てることが増えた。掃除をこまめにするようになった。家に帰って寝るまでの数時間が、乱雑な部屋だと心がすさむ。引っ越しを機に、片付けやすい部屋を作ろうと大量に物を捨てた。リラックスできる部屋は、家で長時間過ごす人のため以上に、忙しい人のリセットタイムのためにこそ、必要な気がする。

時間の価値は、とらえ方次第で高くもなるし、低くもなる。

校長になっていないころ、ママ友が「最近、ダンナが保育園への送りをしてそのまま出勤してくれるようになった。誰もいない家で、コーヒーを飲んでから出かけられる10分がとても嬉しいのよねぇ」と言っていた。今年の私は、少しわかる。引っ越して通勤時間が15分増えた。その代わり、空いた路線なので座れるようになった。「仕事の自分」と、「家庭の自分」のすき間時間。好きな本を読んでリセットする。

また、ありとあらゆる時間を前向きに楽しむのも、時間の価値を上げる。

この1年、地域やPTA行事に参加することで、「家族の時間」のバリエーションが増えた。娘はお兄さん・お姉さんが遊んでくれる、敷津小学校が大好きだ。最初、夫はいきなり「校長先生の旦那さん」になってしまい、大いに戸惑っていた。しかし、保育園で鍛えたせいかお母さん達の間に入るのは抵抗なく、PTAの懇親会では児童の妹を抱っこしている夫がいた。

1年近く過ごし、敷津小校区は家族にとっても居場所の一つになっている。今宮戎の時には、縁日好きの夫が夜に2日続けて通ってきた。金曜日、「保育園にお迎えに行って、お風呂セット積んで迎えに来て!」と、家族で学校の目の前の木津市場に集合することがある。「太平の湯」というスーパー銭湯があり、市場直結なので食事もおいしい。児童とばったり出会うこともある。町を歩くと、地域の方から「校長先生!」と声がかかる。

「お母ちゃんの学校に行きたいなぁ」

「うーん、それは無理やなぁ」

進学先は、1年生が5クラス。人数が多い。この街中の小さな学校は、日本の学校が持つ課題が凝縮されてはいるけれど、子ども全員の顔がわかる。

「自分の子どもを行かせたい学校」。

私は、自信を持ってそう言える。それは単純なキレイ事ではなく、身に迫っている学童保育問題を思うと、「ええなぁ、敷津の子!6年生までめっちゃ学童で遊んでるやん」と考えてしまう。

頭を抱えながらの年度末、共働き向けの子育て支援は小学生にも必要だ!と、声を大にしてアピールしておく。

山口照美(やまぐちてるみ)
同志社大学卒業後、大手進学塾に就職。3年間の校長経験を経て起業、広報代行やセミナー講師、教育関係を中心に執筆を続ける。大阪市の任期付校長公募に合格、2013年4月より大阪市立敷津小学校の校長に着任。著書に『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)など。ブログ「民間人校長@教育最前線レポート」(http://edurepo.blog.fc2.com/)も執筆中

(構成 日経DUAL編集部)

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