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仕方がないとあきらめないで 働く女性へ

スウェーデンから見る日本 高見幸子

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NIKKEI STYLE

 OECDの発表によると、女性の就業率が80%を超えるスウェーデン。女性議員の比率も45.0%と、日本の衆議院における女性議員の比率11.3%を大きく上回っています。女性が広く活躍するスウェーデンで40年近く暮らす筆者。現地での経験を生かし、日本の生活がさらに豊かになるためのヒントを、日本の女性からの質問に答える形で、一緒に考えます。
質問
 日本人として、女性としてどうあるべきか。客観的な視点から、高見さんにたくさんのことをアドバイスしていただいてきました。スウェーデンで改革が進み、日本ではまだ実現できていない育児支援の方法や、人生の再チャレンジの仕組み、ジェンダーの考え方など、とても刺激を受けました。また、日本でどう取り組んだらよいか、同じ目線に立って考えて下さったことがありがたかったです。
 最後にお聞きしたいのは、スウェーデンの女性たちがこの30年余りの改革の中で得たものと失ったものは何か、です。また、日本の女性たちが強みとして活かしていくべきこと、大切にしていくことは何でしょうか。(39歳、二児の母)

スウェーデン女性が何を要求したか

まず、30年余りの改革で何を要求し、何を達成したのか簡単にまとめます。

スウェーデンでは、1960年代に女性の労働力が必要となり、女性の社会進出が急激に増えました。しかし、女性であるため職場で差別を受け、保育園がないための苦労もありました。

そこで、1968年に8人の大学教授や研究者というインテリの女性たちが「グループ8」という女性解放運動の団体を結成し、社会の先頭に立って改革を要求していったのです。

彼女たちの要求の主な3つは、「保育園をみんなに」、「中絶の許可」、「男女の給料を平等にする」こと。彼女たちの運動に刺激されて、男女平等の考えがだんだん社会に浸透し始めました。そして、女性も働いて給料をもらい、自立するべきだという考え方が社会に受け入れられるようになったのです。

女性の要求に国が応じる

「グループ8」の熱心な啓発運動に成果があり、国が要求に応じることになりました。

・「保育園を皆に」
 1974年に、子育ての責任を社会と家族がいっしょに持つというスウェーデンモデルを導入し、国に新しい子育ての責任ができました。それによって、保育園を本格的に建設していきました。そして、現在では待機児童ゼロを実現しています。
・「中絶の許可」
 1974年に法律になりました。
・「男女の給料を平等にする」
 スウェーデンの女性の就業率は、EU諸国で最も高く75.7%です。1970年代には、すでに60%になっていました。その頃、ようやく国も組合も、女性が働くうえで生じる障害を取り除かなければならないという考え方になっていました。

しかし、女性のためにできた新しい労働市場は、保育、看護、高齢者の介護など市の公の機関での仕事で、低賃金だったため、問題が残りました。女性のパートタイムが多いことも問題になりました。これらの問題は、その後、男女平等の法律ができ、オムブズマンも機能したので、女性が進出する業種も拡がり継続的に改善されてきました。しかし賃金の差などはまだ残っています。

女性が得たもの

スウェーデンはこの30年余りの改革で、子育て、高齢者福祉のシステムが整い、女性はキャリアや仕事をあきらめる必要がなくなり、定年退職まで働くことができるようになりました。

それらの改革で、女性が得たことは2つあります。1つは、経済的に自立でき、社会的に認められ、女性に自負心や自信がついたこと。2つ目は、不幸にも離婚をしなくてはならなくなった場合、夫に経済的に依存していないので困ることがなく、自由が得られたことです。

失ったのは、時間と心の余裕でしょう。子どもが2人の一般的な家族で考えても、仕事と家庭を両立するのは、育児も家事も夫婦で男女平等にしても大変なものです。ですから、何らかのストレスを感じていない女性はいないのではと思います。

また、近年は、首都ストックホルムに住む20代の若い女性のストレスが問題になっています。「女性だから」、「結婚するから」、「子どもがいるから」という言い訳がなくなり、特に都会では仕事も教育も様々に選べる可能性も多いため、プレッシャーが大きいのです。選択肢が多いと、この選択で良かったのかと迷ったり不安になったりします。それもストレスになっています。

このように、女性が自立を勝ち取ったことによりすべてがバラ色になったわけではありません。ですが、だからと言って昔にもどりたいと思う女性はいません。この新しい問題も、いずれ解決されていくことでしょう。

人間味が薄れつつあったスウェーデン福祉社会

日本女性の私の目から見ていると、スウェーデンの福祉が進めば進むほど、家族で助け合うきずなが少なくなり、特に親子の関係が冷たく人間味がなくなっていると感じていました。なぜなら愛情のある子育て、介護、看護はやはり親族が一番よくできると思うからです。

それが、近年、国の福祉予算が厳しくなってきていることもあるでしょうが、家族がどんどん福祉に参加するようになり、良い方向に向かっているように思います。

例えば、現在のおばあちゃん、おじいちゃんたちは週に2回ほど、保育園に孫を迎えに行くのが一般的です。それは、無報酬ですが、もし、孫が病気になり、親がどうしても忙しくて面倒を看れない場合、祖父母が仕事を休み、介護手当をもらって世話することができるようになりました。

また、夫婦のどちらかが重病になった場合、妻か夫が労働時間を短縮したり、数カ月や半年ほど長期介護する場合、社会保険から介護手当をもらって看病することができるようになりました。老いた親の介護も同様で、子どもが介護手当をもらって介護できます。

やっとスウェーデンは、これから人間味のある福祉社会になっていくのではと期待しています。

日本女性の強みを活かすシステムを目指す

日本の良さは家族を大切にすることです。福祉システムがスウェーデンほど進んでいないので仕方がないと言われるかしれませんが、日本の女性がその優しさと思いやりで日本の社会福祉を支えています。

私は、日本が目指すのは、以前のスウェーデンの福祉社会のように「社会」という他人に全てを任せてしまうのではなく、家族や親戚ができる範囲で助け合う社会が理想だと思います。ただ、今は国のサポートが少ないため、経済的に厳しい家族も多いのが現実なのだろうと思います。

スウェーデンが試しているように家族が福祉に参加しやすくなるよう、社会保険から介護手当を支払い、子育て、介護、看護の研修を提供し、知識的、技術的な面もサポートするなどのシステムがあれば理想的だと思います。日本が目指す福祉社会は日本女性の強みを生かし、日本の良さを大切にするシステムだと思います。

 「スウェーデンから見る日本」は今回が最終回です。ご愛読いただき、ありがとうございました。
高見幸子
1974年よりスウェーデン在住。15年間、ストックホルムの基礎学校と高校で日本語教師を務める。1995年から、スウェーデンへの環境視察のコーデイネートや執筆活動等を通じてスウェーデンの環境保護などを日本に紹介。2000年から国際NGOナチュラルステップジャパンの代表。現在、顧問として企業、自治体の環境ファシリテーターとして活動中。共訳『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』(合同出版)など。

[ecomomサイト2013年8月6日付記事に加筆修正し再構成]

[参考] 家族と自然にやさしい暮らしがテーマの季刊誌『ecomom(エコマム)』。2014年春号では、「『食』からはじまる家族の健康」「イマドキの小学校の英語どうなっているの?」「震災を忘れない――。今からでもできること」などを特集。公式サイト(http://business.nikkeibp.co.jp/ecomom/)で登録すると、無料で雑誌が届く。

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