アジアのLCC 乗務員はファーストクラス
清掃・モデル、一人で何役も
航空業界の華と言えば、CA。低運賃のLCCでは、容姿よりも作業効率の高い人材を優先しそうだと思っていたが、高い接客能力に魅力的な容姿も兼ね備えており、大手航空会社と遜色はないだろう。
特筆すべきなのがエアアジアだ。体のラインを強調した真っ赤な制服姿もインパクトは強いが、実に数多くの作業をテキパキとこなしていた。
搭乗ゲートでは地上職員と一緒に乗客の搭乗券をもぎり、半券を渡す。その間、ほかのCAたちは機内で乗客に座席への誘導をする。離陸すると早速、機内食を配り、その後はカートを押して飲料やお菓子、エアアジアのロゴ入りシャツや帽子などグッズも販売している。
それが終わると、乗客が食べ終わった機内食を下げ、ゴミも回収する。ゴミ袋を持って通路を歩き、乗客にゴミを入れてもらう。もちろん顧客の要望にも一つ一つ丁寧に応対する。それだけでは終わらない。乗客が降りたと同時に機内清掃もし、一人何役もこなす。
バンコクのドンムアン空港でエアアジアのキャンペーンの撮影に出くわした。自社の看板を持った長身のモデルがカメラに向かってほほ笑む。
だがこのモデルたち、本物のCAなのだ。居合わせた広報担当者に尋ねると、同社の広告に登場するモデルは自社のCAたちだという。
今回搭乗した済州航空のソウル―バンコク間は5時間半にのぼる。乾燥した機内では、のどが渇く乗客も多く、こまめにオレンジジュースなどを渡して回っていた。
また、狭い機内は小さい子どもにとって退屈になりがちだ。イースター航空では騒ぐ子どもに対しておもちゃを渡す光景も見られた。
スクートやエアアジア、タイガーエアウェイズにはイケメンCAもおり、乗客に優しい笑顔を振りまいていた。
あまりにCAたちの笑顔が素晴らしかったので、写真撮影をお願いしてみた。照れたのか、警戒されたのかイースター航空には「ノー」と言われたものの、ほかのLCCは快く応じてくれた。
別注文の機内食、満足度は値段以上
LCCは機内食が付いていないところが多く、別注文になる。各社ともにメニューを用意しており、好みの機内食を選べる仕組みだ。
スクートではマレー料理のナシレマを選んだ。ココナツミルクで炊いたご飯に辛く味付けした鶏肉と青野菜、目玉焼きなどが温かい状態で出てくる。牛乳付きのコーンフレークと果物、飲み物も添えられた豪華メニューだ。
ご飯の甘い香りとスパイスの刺激的な香りが、食欲をかき立てる。文句なしにおいしい。航空券購入時に注文し、さらにもう1食がついて、6.99シンガポールドル(約530円)とお得感がある。
タイガーエアウェイズでは、サンドイッチを注文した。中身のローストビーフは厚さ5ミリメートルと分厚く、チェダーチーズの味も濃厚だ。価格は8シンガポールドル(約600円)だが、両手で持たないと中身がこぼれる大きさで、一つ食べただけで満足する。
今回利用したLCCのうち済州航空だけが機内食が無料だった。バナナ風味のパウンドケーキとブルーベリーのカップケーキは甘さ控えめ。生地もしっとりとしていて、品質の高さを感じた。ヨーグルトとカボチャのクッキーも付いてくる。
機内での注文になるが、イースター航空ではインスタントのキムチラーメンとキノコビビンバを注文できる。CAがお湯を注いで座席まで運んでくれ、数分待って食べる。注文の仕方が分からず記者は食べそびれたが、前席の子ども連れがラーメンを注文、機内にキムチのにおいが充満した。
(倉本吾郎)
[日経MJ6月21日付]
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