体重次第で家賃が増減 シェアハウスで仲間とやせる
大阪に登場、ノリは女子校
「このマシンめっちゃ太ももにくるわ」「バランスボール難しいね」。シェアハウス内のトレーニングルームは、ダイエットのために汗を流す女性たちのにぎやかな声があふれていた。
家賃は月4万~5万円
大阪府吹田市の住宅街の一角に昨年11月、企業の元独身寮を改装して、シェアハウス「ビューティー&ダイエット江坂」がオープンした。入居者は女性限定。26部屋はすべて埋まっている。出身地は沖縄や奈良、新潟など様々で、20代の会社員や学生が中心だ。
通常の賃貸マンションは契約時に家賃を固定するが、このシェアハウスは家賃が体重に連動して上がり下がりする「変動制」。今回、シェアハウスを初めて手掛けたブロードエンタープライズ(大阪市)が「大阪でやるからには変化球が必要」(中西良祐社長)とひねり出したアイデアだ。
10平方メートルのワンルームの部屋は入居時の家賃が月4万5千円。まずはここからスタートする。入居者は3カ月ごとに体重を計測。そのとき、1キログラム減るごとに家賃が千円下がり、逆に1キログラム増えると千円上がってしまう。例えば、3キログラム落とすと4万5千円から4万2千円に下がり、次の計量まで3カ月間この家賃が続く。ただ家賃の上限は5万円、下限は4万円に決められており、急激なダイエットと家賃の上昇に歯止めをかける。
女性たちはなぜ、シェアハウスを選んだのか。「ちょうど引っ越しのタイミングだったから」「ひとり暮らしより安全そうだから」。もちろん、「ダイエットはしたい」というものの、ダイエットで家賃をどんどん下げようという入居者はいなかった。
連帯感とライバル意識が刺激に
「今度、ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)行こうよ」。4月下旬の週末、共用のリビングで初めての交流パーティーを開催。たこ焼きを作りながら打ち解けた。みんなに声をかけた前田祐子さん(25)は3月に兵庫県から引っ越してきたばかり。シェアハウスなら友達を作りやすいと考えたという。
「今からDVDやらへん?」とリビングに集まり、人気ダンスユニットのDVDを見ながら踊るエクササイズは「みんなと一緒にやるから楽しい。1人ではつまらん」。お互いに生活リズムはバラバラだが「『ただいま』『お帰り』と言い合えるのがうれしい」。
ダイエットという共通の目標で連帯感が高まる一方、そこにはライバル意識も働く。会社員の三村明子さん(28)は「ひとり暮らしをしていたときは『明日からしよう』とつい自分に甘くなっていた」が、シェアハウスに入ったのを機に気持ちのギアを入れ替えたという。サラダ中心の食事とエクササイズで、ひそかに4キロ減をめざす。
ダイエットの原動力は他人と比較することから生まれる。「キッチンで他の人とご飯を食べているとき、つい相手と自分の量を比べてしまう」(前田さん)というのが彼女たちの本音のようだ。「ここに来る前は好きなだけ食べていたけど、今は周りをみてご飯の量が減った」と明かす人も。
ただし、比較しつつも「普段の会話の中で体重の話題とか、どれくらいやせたかは触れない」とみな一様に口をそろえる。お互いダイエットをしていることは知っているが、深く踏み込むのは避ける。「女子校でも体重の話はタブーだった」。ダイエットシェアハウスを支えているのは女子校のノリなのかもしれない。
(古山和弘)
[日経MJ2013年5月17日付]
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