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割れてなおみやび、出土した鍋島焼のかけら

佐賀藩蔵屋敷跡(現・大阪高等裁判所、大阪市) 古きを歩けば(45)

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NIKKEI STYLE

細やかで隙のない筆遣い。染付の澄んだ青には巧みなグラデーションがかかり、端正なモチーフを彩る。各所に見える痛々しいひびや断面が、皮肉にも日本磁器で最高と評される精巧さを一層引き立たせる。

徳川将軍に献上、民間に流通せず

大阪高等裁判所などの敷地(大阪市北区)には江戸時代、佐賀藩蔵屋敷があった。3年前の発掘で、同藩で生産された最高級磁器「鍋島焼」の破片が大量に出土。大阪府立近つ飛鳥博物館(河南町)で3月24日まで開催中の「歴史発掘おおさか2012」展で公開されている。

鍋島焼は、佐賀藩鍋島家が将軍への献上品として17世紀半ばに開発し、藩直営の窯でつくられた。色絵や染付、青磁などがあり、尺皿(直径約30センチ)2枚のほか七寸皿(約21センチ)・五寸皿(約15センチ)各20枚組など計5品82枚のセットを毎年、将軍に献上。幕府要職や他大名、公家にも贈られたが、当時は民間には一切流通しなかった特殊な役割を持った磁器だ。

最高の材料と技術、徹底した管理

「飾り物ではなく、実用に供された食器でした。釉薬(ゆうやく)を長崎で買い付けるなど、最高の材料と技術が惜しげもなく注がれました」と、発掘を担当した大阪文化財研究所の市川創さんは話す。佐賀県立九州陶磁文化館の大橋康二特別学芸顧問は「採算を度外視し、徹底した管理と技術の粋で高い品質を均一に保ったのが鍋島焼です。組み皿をみると、絵付けの個体差が分からないくらい精巧に作られています」と説明してくれた。


佐賀藩蔵屋敷跡があったのは「天下の台所」と呼ばれた大阪の中枢、中之島かいわい。諸藩の産品を保管、販売する蔵屋敷が川沿いに立ち並び、国元からの物資を満載した船が川面を往来していた。

35万7000石の大藩だった佐賀藩の蔵屋敷は約1万4000平方メートルの広さがあり、大阪で屈指の規模を誇った。詳細な絵図をはじめ文献資料が数多く残っており、船を引き入れて荷を積み下ろしした船着き場「船入(ふないり)」を中心に、米蔵や勤番武士の暮らした長屋、大目付や留守居ら要職の部屋などを配置した屋敷内の様子が伝わっている。1990年度の発掘では御船入の石垣遺構が見つかり、裁判所の敷地内に復元保存してある。

将軍・大名用の両方が出土

鍋島焼の破片が出土した例は、東京の大名屋敷跡などではあるが、大阪では初めて。見つかった破片約350点の多くは、品質が頂点に達したとされる17世紀末から18世紀前期のものだった。また将軍への献上品と大名らへの贈呈品では描かれた絵柄が一部異なっていたが、蔵屋敷からは両方が出土した。

市川さんは「参勤交代の途中で藩主が宿泊する時に使うため、蔵屋敷の備品となっていたものでしょう」と推察。大橋さんも「窯元から搬出する際、道中での破損に備えて必ず一定数の予備を一緒に運びました。無事運び終えて余剰となった品を、自家用として蔵屋敷で使った様子がうかがえます。大変面白い調査成果です」と注目する。

蔵屋敷は1724年、大阪の街の3分の2を焼いた大火で全焼。鍋島焼の破片は、その後始末をした際に廃材を捨てた穴から出土しており、火災で破損して廃棄されたとみられる。出土品の中には釉薬が炎であぶられて変色したり、発泡したりしているものがあったという。

発掘では茶わんやとっくり、化粧つぼといった日用品や、食材にしたマダイやツル、スッポン、シカの骨など、蔵屋敷での生活を物語る遺物も多数発見。18世紀後期の滑石製の入れ歯も見つかった。欧州で製造されたとみられる陶製やガラス製の食器なども出土し、グレードの高い暮らしぶりをうかがわせる。

佐賀でつくられた瓦や、素焼きの皿も出土した。「こうした品は大阪でも入手できたはず。わざわざ国元から運んだのは、来訪者に佐賀の産品をPRすると共に、佐賀藩士としてのアイデンティティーを確認するためでは。彼らの矜持(きょうじ)がうかがえます」。市川さんはこう話した。

(文=編集委員 竹内義治、写真=玉井良幸)

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