現代に生きる中世荘官の館今西氏屋敷(大阪府豊中市) 古きを歩けば(38)

2012/10/9

「屋敷は神領。預かっているだけ」

屋敷の北東にある水田の真ん中に、ぽつんと木が立っている。清水さんが「根本に石造りの小さな社があります。『春日大社から遣わされ、途中で行き倒れた神鹿(しんろく)を埋めた』との伝承があります」と教えてくれた。かつて屋敷の領域を示すために建てた「末社」と考えられている。近くにある松林寺には、15世紀にさかのぼる今西家代々の墓が約90基も並んでいる。「屋敷地、建物、古文書、墓所、伝承。さまざまなものから歴史が総合的に把握できる、大変珍しくて貴重な遺跡です」。清水さんは強調する。


【アクセス】阪急宝塚線服部駅下車、徒歩15分

国史跡での生活は、保存のための様々な制約があるはず。窮屈ではないのだろうか。今西さんに尋ねると「気になりません。『屋敷は神領。今西家は預かっているだけ』と聞かされて育ちましたから」と笑顔で答えてくれた。「荘官の多くは赴任しても、都を懐かしんで早く帰りたがったと聞きます。しかし、うちの先祖は土地の人間になりきって、神領を命懸けで守り抜きました。その思いを今後も伝えたいのです」。

屋敷は年に一度、一般に公開される。今年は10月20日だ。

(文=編集委員 竹内義治、写真=尾城徹雄)

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧