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時代劇引っさげ、三池崇史がカンヌにやってきた

カンヌ映画祭リポート2011(11)

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NIKKEI STYLE

三池崇史がとうとうカンヌにやってきた。オリジナルビデオの監督としてスタートし、1990年代以降の日本で最も多作な映画監督の一人だ。

バイオレンス映画が多いが、ジャンルは問わない。ホラー(「着信アリ」)、学園もの(「クローズZERO」)、ヒーローもの(「ゼブラーマン」)、ミュージカル(「カタクリ家の幸福」)、西部劇(「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」)、時代劇(「十三人の刺客」)……。娯楽映画を量産しながら、「殺し屋1」「牛頭」などカルト作品の人気も高い。とりわけ海外には熱狂的なファンをもつ。

そんな三池が、本格的な時代劇を引っさげて、いよいよ世界のひのき舞台にあがった。昨年の「十三人の刺客」のベネチア国際映画祭コンペ部門出品に続き、「一命」のカンヌ出品。ベネチアにはたびたび招かれていた三池だが、カンヌの公式部門に選ばれたのは初めてだ。

公式上映に先立つ19日午後の記者会見は、そんな三池のキャラクターがよく現れていた。一言で言えば徹底した現場主義である。

「あなたは古典的な映画作りに反する監督と思っていたが、なぜ小林正樹監督の古典映画(『切腹』)の物語に興味をもったのか」というフランス人の質問に対し、三池はこう答えた。

「まず誤解を解きたい。私はバイオレンスの映画を作ろうと思ってやってきたのではない。現場で無我夢中でやってきて結果的にできた映画がバイオレンスになっていた。『一命』もまた無我夢中の結果だ」

「自分はなんらかのジャンルを目指して、そのジャンルに当てはめる作品を作っているのではない。何を目指しているかというと、それは登場人物の中に命令が隠されている。自分は映画そのものに支配されている」

時代劇に対する考えも気負いがない。「切腹」には敬意を表した。

「時代劇を知るスタッフは少なくなっていく。一方で3Dカメラが進化するなど、製作現場の周りが渦巻いている。監督としては楽しい状況だ。自分なりのものが自然に生まれてくると思う」

「『一命』はシンプルな原作(滝口康彦『異聞浪人記』)の魅力を見直してみようと思った。50年前に映画化した『切腹』はリスペクト(尊敬)すべきものであって、批判の対象ではない。どちらが優れているというのではなく、自分たちは自然にあればいいと思う。先輩たちがこの作品を見て、その魂が生き残っていると思ってもらえたら、それはすてきなことだ」

カンヌのコンペでは初めての3D上映となったが、新技術への取り組みも柔軟だ。

「2Dでやるべきことはたくさんあるし、3Dにも興味がある。観客が2Dか3Dかを選ぶように、作る側も選択肢を楽しめばいい。今の3Dは夢が飛び出してくるものだが、飛び出してはいけないものが全部飛び出してくるような映画も作ってみたい」

「一命」は19日深夜に公式上映された。食い詰め浪人の津雲半四郎(市川海老蔵)が、彦根藩の上屋敷を訪ね、玄関先で切腹させてほしいと請う。また金の無心のための「狂言切腹」かと思った家老(役所広司)は、数カ月前の事件を話して聞かせる……。

三池作品の強さは、すべてを映像で語りきる点にある。「一命」は後半に立ち回りがあるものの、ほとんどが浪人と家老の緊張感のある対話を軸に進行する静かなドラマだ。それでも三池はハッとするような映像で、「切腹」以上に登場人物一人ひとりの性格をきめ細かく描き出す。

千々岩求女(瑛太)の竹光での切腹の迫力はもちろんだが、たとえば彼を切腹に追い込む彦根藩士たちのそれぞれの性格を描き分け、その葛藤をあぶりだす。あるいはまんじゅうを分け合うシーンなどを通して、貧しくとも温かな浪人の家族のこまやかな情愛を浮き彫りにする。三池の演出力の奥深さを「一命」は見事に証明している。

三池と同様、海外でカルト作家として人気の高い園子温も、初めてカンヌにやってきた。18日深夜、新作「恋の罪」が監督週間の特別招待作品として上映された。

渋谷のラブホテル街で起きた東電OL殺人事件に触発された物語だが、円山町という舞台を借りたぐらいで、ほとんど事件とは関係ない。富や社会的地位をもつ大人の女性3人が性愛の渦に巻き込まれていくさまを鮮烈な映像で描く。その突飛なイメージ、赤裸々な人間描写から、現代の日本人の深層心理に迫る園の手腕はますますさえている。

自主製作映画からスタートし、一貫して自分の作りたい企画で勝負してきた園は、職人肌の三池とは対照的な映画作家だ。しかし、そのバイオレンス性、強烈な視覚イメージ、タブーを恐れぬ冒険心、アウトサイダーへの共感は共通している。三池は1960年生まれ、園は1961年生まれとほぼ同世代。2000年以降の充実した作品が海外の映画祭で高く評価されている点も似ている。

1990年代から積極的に海外の映画祭に出品してきた園だが、2009年「愛のむきだし」がベルリン、10年「冷たい熱帯魚」がベネチア、そして「恋の罪」でカンヌと、3年連続で3大映画祭に招かれた。海外での地歩を確実に築きつつある。

園にとって国際映画祭とはどういう場なのか? 「恋の罪」上映終了後の深夜のマリオットホテルで聞いてみた。

「ありがたい場です。僕のように日本で異端の立場に置かれていると、メーンの流れの中で浮いてしまう。海外映画祭で評価されるという逆輸入的な付加価値が必要だった。これからは海外でも映画を作りたいので、他国のプロデューサーや出演者にアピールする場としても必要になる」

異端か正統か。それはその人を取り巻く社会が決定する。日本社会の正統は、国際社会の正統とは限らない。日本の異端が世界の正統であることもある。日本映画の異端児が活躍する今年のカンヌ映画祭は、世界と日本のねじれをそのまま映しているのかもしれない。

(編集委員 古賀重樹)

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