2012/7/10

力強く絶妙なバランスを示す石組み

長谷川等伯が走り書きしたとされる障壁画(春)

実際に向き合ってみると、北庭の絶妙なバランスには改めて驚いた。点在する石組みは3つで1組になって三角形を形成し、それがまた3組で1つのさらに大きな三角形を成す。「あれほど力強い石組みはない。なおかつ計算が表に立たず、まろやかになっている。以来30年この仕事をしているが、とてもまねできない。形はまねできても魂が伴わない」と脱帽する。

もう一つ腐心したのは「この庭を見ていた人が、どんな思いでいたかを伝えていくこと」だった。「秀吉という英傑に対する北政所の追慕も、北庭には込められていると理解している」という。

【アクセス】京阪祇園四条駅から徒歩約15分。

円徳院は、観光客で混み合う「ねねの道」を挟んで高台寺の西向かいにあるが、北庭は意外なほど静かだ。青紅葉をわたる風の音を聞きつつ、英傑とその妻の生涯を思うのも悪くない。隣接した江戸期の茶室でお茶もいただける。

北庭と直接関係はないが、もう1つよく知られた寺宝が、絵師の長谷川等伯が走り書きしたとされる障壁画だ。かつて大徳寺三玄院(京都市北区)から円徳院が買い取ったもので、三玄院にふすま絵を描かせてほしいと懇願していた等伯が強引に寺に上がり込み、桐(きり)の紋を散らした唐紙のふすまに山水図を書き上げたと伝わる。

実物は等伯の故郷石川県の七尾美術館と、京都国立博物館に寄託されている。寺で展示されているのはデジタル複製画だが、無名時代の等伯の熱気の一端がうかがえる。

(文=中川竜、写真=沢井慎也)

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