新型コロナウイルスに伴う国の緊急事態宣言解除を受け、東京都立の各高校は6月から対面授業を部分的に再開した。それとは対照的に、5月初旬に始めた双方向型オンライン授業の継続を選択したのが、都立日比谷高校だ。生徒にとっての学習効果、カリキュラムの消化具合、学校運営の効率性などを総合的に判断した。コロナ流行の第2波への備えの意味もあるという。全国の公立高校でトップの進学実績を誇る日比谷高校の取り組みを取材した。
6月2日午後、国会議事堂にほど近い日比谷高校の校内には1人の生徒の姿もなかった。しかし、各教室からは声が漏れていた。
英語科の阪下ちづる教諭はパソコンに目をやりながら、流ちょうな英語で生徒とやりとりする。この授業は全て英語。阪下教諭は時間を計りながら課題を次々と与え、テキパキと授業を進める。「Zoom」を活用しているため、生徒同士がチームを作り、対話する仕組みも可能だ。
別の教室をのぞくと、オンライン授業では難しいとされる体育の授業も行われていた。剣道家でもある体育の興梠実教諭はダンスと筋トレの授業を実施。パソコンに向かって「うまくバランスをとりながら」と声をかけ、汗だくになりながら体を動かす。各教室には教師1人だけ、一見すると奇異に映るが、いずれの先生も真剣そのもの。すでにこのスタイルの授業に慣れている感じで、生徒から熱意も伝わってくる。
武内彰校長は「先生方は黒板を使ったり、独自にプレゼン資料を用意したりして工夫しながら授業をやっている。実は半数以上の教師は在宅でオンライン授業を実施しているが、私費で黒板を購入したという熱心な先生もいて頭が下がる思いだ」と話す。