田中さんは、営業の責任者としてオファーボックスの提案書を持って、企業や学生を訪問して回った。しかし、従来の就活の慣習が根強く、市場はなかなか拓けなかった。企業や学生に伴奏してジワジワと顧客を増やした。「なんとか3年目から売り上げが立つようになった」と田中さんは振り返る。

適性検査でリスキリングも支援

オファーボックスは学生に口コミで広がった。創業して9年、アイプラグは21年3月に東証マザースに上場した。23年卒の就活生約45万人のうち約20万人が同社に登録、企業の約11000社が利用している。田中さんは同社のCMO、CHRO、そしてCFOとして幅広く経営業務全般をみた。

アイプラグは18年にイー・ファルコンを子会社化した。田中さんは「多くの企業が人的資本経営を重視するなか、適性検査eF-1Gは企業価値向上のためのピープルアナリティクスを支援する最有力のツールになる。さらにビジネスパーソンのリスキリングを支援するツールにアップグレードさせ、2030年を目標に大きなビジネスにしたい」という。

適性検査を人材採用分野にとどめず、配置や登用といった組織開発分野やビジネスパーソン全体のキャリア形成にもつなげていくのが狙いだ。DX化によって、マーケティングやエンジニア部門などには次々新たな職種も生まれている。

様々なタイプの人材が求められているが、定期的に適性検査を受け、各個人が特性や能力・スキルを的確に知る一方で、足りない部分を認識して、リスキリングにつなげていく。社員のそういった取り組みを企業が寄り添いながら一緒に考え実現していく時代になると予想し、その触媒となるツールを目指すという。

8月には官民連携で「人的資本経営コンソーシアム」が発足した。当初100社参加の見込みが、320社を超えた。大企業中心に人材育成の機運は高まっている。リスキリング市場が立ち上がろうとする中、「我が子の未来のために」を掲げた田中さんの新しい挑戦が始まりそうだ。

(代慶達也)