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映画セレクション

2014/1/10

映画セレクション

「共喰い」 北九州という土地を通して戦後の深層に迫る

青山真治監督「共喰い」も画面に力がみなぎっていた。暴力癖のある父親の血を継いだことを恐れる青年の物語。田中慎弥の同名小説が原作だが、昭和と平成の切断面を描き出す青山の第一作「Helpless」とも呼応する。北九州という土地を通して戦後日本の深層に迫る青山の映画作家としての迫力を感じさせた。

冨樫森監督「おしん」は30年前の国民的テレビドラマの映画化でありながら、映画としての豊かな手ざわりをもつ傑作だった。水くみ、火起こし、飯炊き、洗濯、ぞうきんがけ、子守……。冨樫は絶え間なく働くおしんの身ぶりをひたすら追い、その身体性を通して、女性の労働という現代に連なる主題を浮かび上がらせた。

青山真治監督「共喰い」 (C) 田中慎弥/集英社・2013『共喰い』製作委員会
冨樫森監督「おしん」 (C)2013「おしん」製作委員会

クロード・ガニオン監督「カラカラ」、中村義洋監督「みなさん、さようなら」、廣木隆一監督「だいじょうぶ3組」、石井裕也監督「舟を編む」、三池崇史監督「藁の楯」、中田秀夫監督「クロユリ団地」、白石和弥監督「凶悪」、園子温監督「地獄でなぜ悪い」、吉田恵輔監督「麦子さんと」はそれぞれ挑戦心に満ち、見応えがあった。

「ホーリー・モーターズ」 画面から突き抜けてくる映画作家の叫び

李相日監督「許されざる者」、阪本順治監督「人類資金」には、どうしてもこの作品を撮りたいという監督の叫びがあった。山田洋次監督「東京家族」、降旗康男監督「少年H」にはベテラン監督の戦後、戦中への思いが透けて見えた。

レオス・カラックス監督「ホーリー・モーターズ」 (C) Pierre Grise Productions

外国映画ではレオス・カラックス監督の13年ぶりの長編「ホーリー・モーターズ」に圧倒された。たまりにたまった映画作家の叫びが、デジタル化によって変質する映画への危機感とあいまって、画面から突き抜けてくるようだった。ワン・ビン監督「三姉妹/雲南の子」、タヴィアーニ兄弟監督「塀の中のジュリアス・シーザー」はドキュメンタリーとフィクションの違いを超えて、それぞれに新しいリアリズムを感じさせた。

映画監督の作家性を追求し、擁護し続けた大島渚の不在は重い。「深海に生きる魚族のように、自らが燃えなければ何処にも光はない」という大島の座右の銘は、今日の監督たちが置かれた状況にも通じるに違いない。大島に加え、高野悦子、ドナルド・リチーら日本と世界の懸け橋となったかけがえのない映画人が世を去った。映画黄金期から現代まで強烈な存在感を発揮し続けた俳優、三国連太郎も逝った。

(編集委員 古賀重樹)

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