東京都の地図を眺めていたら、隣県との境界線が切れている場所があった。国土地理院に聞いてみると、境界が決まっていない場所だという。実は東京都は千葉県、埼玉県との間で、境界を巡る「紛争地」を抱えている。なぜ境界が定まらないのか。東京都の「領土問題」を追った。
東京湾の境界線 東京都は真南、千葉県は南西を主張
東京都江戸川区にある葛西臨海公園。野鳥が集い、水族館や観覧車がある公園は、都民のオアシスだ。公園はちょうど旧江戸川の河口にあり、川の対岸には東京ディズニーランド(TDL)が見える。TDLは東京都ではなく千葉県浦安市の所属だ。
実は葛西臨海公園とTDLとの間を流れる旧江戸川の河口には、境界線がない。どこまでが東京都でどこからが千葉県なのかが決まっていないのだ。
川が境界となる場合、通常は中央が境界線となるはず。しかし決まっているのは舞浜大橋までで、そこから下流は確定していない。
それだけではない。旧江戸川が流れ込む先にある東京湾上の境界線も、決まっていないという。どういうことか。東京都、千葉県の担当者にそれぞれ聞いたところ、50年以上協議が続いているが、いまだに決着していないことが分かった。
東京都によると、両者の協議が始まったのは、1961年(昭和36年)。現在TDLがある土地の埋め立て計画が持ち上がったのがきっかけだった。
1964年(昭和39年)には港湾の管理について合意した。このとき、旧江戸川の河口から南西方向に延ばした線が「港湾管理に限って」境界線となった。関係者の間では「39年合意線」と呼ばれている。
千葉県は、この「39年合意線」を行政上も境界線とすべきだ、と主張している。川の流れに沿っているというのがその理由だ。これに対して東京都は、旧江戸川の河口から真っすぐ南に延ばす「真南線」を唱える。両者の主張は交わらず、長年平行線をたどってきた。
海の上なのだから境界はどこでもいい、と思うかもしれない。しかし、これまで何度か問題が生じてきた。