日本を代表する繁華街、東京・銀座。ブランドショップがひしめくこのエリアに、住所がない場所がある。道路の高架下にあるショッピングセンターで、長年にわたり正式な住所がないまま放置されてきた。その理由を探っていくと、銀座に眠る謎が浮かび上がってきた。
銀座の高架下、区境定まらず
「東京都中央区銀座西2-2先」。この住所を聞いて、場所が思い浮かぶだろうか? 試しにグーグルマップで住所を入れてみると、「銀座」の地図が出てくるだけで、場所を特定できなかった。「先」を省いて調べてみても結果は同じだ。それもそのはず。銀座は1丁目から8丁目までしかなく、「銀座西」という住所はないのだ。
この住所が指す場所は「銀座インズ」。道路の高架下にあるショッピングセンターだ。いったいどういうことなのか。担当者に聞いてみた。
「うちは正式な住所がないんですよ」。担当者は苦笑する。銀座インズがある場所はもともと外濠(そとぼり)川という川が流れていた。ちょうど中央区と千代田区との境界にあり、川の中央部分を区境としていた。川なので当然、住所はない。戦後、川を埋め立てて道路を造る際にも境界は画定せず、住所も割り振られなかった。「銀座西」というのはあくまで便宜上の住所だという。