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 電子メールで取引先や社内との調整が済む、今どきの静かな職場。業務の効率化が進んだ半面、社員間のコミュニケーションが薄れていないだろうか。そんななか、あえて雑談を仕掛けて雰囲気を和らげ、部下のやる気を引き出す上司が注目されつつある。商談をスムーズに運ぶ効果もある「雑談力」で成果を上げる上司とは。

略語でにぎやか

略語でコミュニケーションを図る中村洋一さん(写真左、甲府市)

略語でコミュニケーションを図る中村洋一さん(写真左、甲府市)

甲府市にある山梨県庁西別館4階の県観光部観光企画・ブランド推進課。富士山やワインといった山梨の観光資源を首都圏に売り込んだり、映画やドラマのロケを誘致したりする同課のリーダー、副主幹の中村洋一さん(45)は略語づくりの"名人"として、17人の部下から慕われる。

「例の件、ソノカク」「FTKから連絡入った?」――。ソノカクは「その後どうなったか、確認して」、FTKとは県の出先機関、富士・東部建設事務所と、いずれも略語だ。中村さんはリーダーとなった2010年4月以来、部下とのコミュニケーションで絶えず略語を編み出す。

「いきなりFTKと言われても分からない」と、オヤジギャグへの職場の評価はいまひとつだが、中村さんはめげない。雑談を意識した略語がきっかけで、職場の会話が弾むからだ。今では次にどんな略語が飛び出すのか、ちょっとした話題にもなっている。上司の雑談力が功を奏してか、同課はにぎやかな職場として県庁内でも有名だ。

「昨日のドラマ見た?」。TOTOのメディア推進部グループリーダー、森川光子さん(50)は、会議が始まる前の5分間や終了直後、席に戻るまでの時間を使って部下に雑談を仕向ける。宣伝・広告が担当の同部は、時流に即した広告をつくることが求められる。ドラマで使われるキッチン用品のデザインや色使いは、格好の雑談材料。「会議では出にくい部下の本音やアイデアが、実は会議前後の雑談に詰まっている」と明かす。

森川さんらの雑談は広告代理店も参考にする。新システムキッチン「クラッソ」のコマーシャルにも、雑談の成果が反映されているという。例えば宣伝コピーの「キッチンにファッション?」。昨年11月、広告代理店が最終提案してきたこのコピーは、採否決定の会議前の雑談で採用が固まっていたという。「専門性や担当の立場から離れて、母や若い女性の視点からそれぞれ勝手に『どう、これ』などと話すなかで、流れが決まった」という。

「(上司・部下の)垣根がなく、雑談を通じて私たちの個性を理解してくれている」。部下のひとり、野々下亜都子さんは評価する。社長の張本邦雄さんも「職場での雑談はビジネスにもつながる」と前向きにとらえる。

メールや交流サイト(SNS)で仕事をある程度こなせてしまう今の職場。雑談を含む会話の機会が減ってしまい、職場の雰囲気が堅くなるケースは少なくない。

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