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リポーター歴20年、テレビの裏側を語る

立川談笑

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NIKKEI STYLE

 突然ですが、この連載は残すところわずかとなりました。これまでに言い足りなかったところをギュギュッとまとめてお届けします。落語っぽいところが続いたから、TVの話をしましょうか。

先週、フジテレビ「とくダネ!」に関わったディレクター同士が結婚するという披露宴に招かれました。場所は芝パークタワー。フランス料理がすさまじくうまかったー! どうぞお幸せにね!

同じテーブルには制作のお歴々とともにリポーターの岸本哲也さんや田中良幸さん、阿部悦子さんも。お互いに出演者とはいえ意外に同席する機会が少ないので、とても新鮮で楽しかった。

「ところで、にいさんは(※なぜか岸本さんは私を「にいさん」と呼びます。芸人ぽいトーンで面白い)リポーターをやって何年になります? 私や田中さんは、これでもう10年なんです」

ふむ。そう尋ねられて記憶を探って、答えました。

「たぶん、20年くらいかなあ」

うわあー!と誰より驚いたのは私です。そうか、そうなのか。

前置きが長くなりました。私は落語家ですが、TVでの仕事も長くてそれはそれで本職だと自覚しています。そこで今回は、画面には映らない、情報番組を制作する現場をご紹介します。

古い話からします。20年前、落語の世界から迷い込んだTV業界はきらびやかでした。

夕方にもなると制作デスクの一角には、とりどりのお弁当が山積みとなり、宅配ピザや大きな寿司桶(すしおけ)がドン、ドン、ドドーン!と、それはそれは圧巻の光景でした。「おやおや、毎晩パーティーかよ!」と目を丸くしたものです。深夜宅送りも基準が緩くて、「電車で乗り換えするより、局に戻ってタクシーの方が楽かな」みたいな。当時は民放各局とも、だいたい似たような環境だったようです。

とはいえ今や、それは遠い昔話。パーティーコーナーは消えてなくなり、宅送りの条件も明確になって本当に必要な場合でないと使えなくなりました。ロケ中の食事ですら、各自が自腹で支払うのが当たり前。常識的な世界になったということでしょうか。

月~金の朝の帯番組です。制作スタッフは大きく「曜日班」に分かれています。彼らは1週間を、各オンエア日に向けて過ごします。たとえば火曜班のメンバーなら、金曜あたりからぼちぼちデスクに顔を出し始めて、ウェブや新聞雑誌に目を通したり。土日になるといよいよみんなのテンションが上がってくる傍らで、班のチーフは放送ラインナップの最低限の妥協案をぬかりなく探っている。

そして放送前日となると、まさにスイッチオン! 月曜班の放送を見ながら、翌日の放送の原案を確定します。放送終了後。戦いを終えてすっかり疲労困憊(こんぱい)した月曜班の面々と、翌日に本番を控えて意気上がる火曜班とが「引き継ぎ」の会合をします。オンエア直後の月曜班の反省や感想コメントを引き取って、火曜班チーフのセリフはこんな具合。

「えー。明日のアタマネタは、今日のトップネタをさらに掘り下げます。次は台風。その次は、発生をにらみながら、何か考えます」

みたいな。「発生」とは突発的な事件や事故などのことです。

この後、火曜班のメンバー全員は翌日の放送を終えるまで、ロケ取材に編集にと徹夜での突貫作業に没頭することになります。

そんなディレクターたちを見ていると野球の投手陣を連想します。先発ローテーションは一定のペースで登板、休養、準備を繰り返す。また近年では曜日ごとのチーム編成ばかりでなく、芸能班や企画班、オンエア班など分担が進んだ様子は、あたかも中継ぎ、セットアッパー、リリーフと投手の分業が進化した流れと似ていてまた面白かったりして。

さて、ロケ取材の現場での話。ディレクターが職務としてあれこれ指示をするのは、ご承知の通りです。しかし、リアルな現場で我々が向かい合う相手は生身の人間や移り行く自然ですから、想定外の落とし穴だらけです(だからこそ私なんかは発見が多くて楽しいのですが)。

現場に行ってみたら、事前の情報とは全然違ってたなんてことも少なくありません。まさに、「聞くと見るとでは大違い」。さあ、ここで柔軟に自在に対応できるかというと、そうは問屋が卸さない。というのも、現場のディレクターにはさらに指示を出す上司がデスクにいるのです。「この話のテーマって、要するにここがポイントなんだ」だとか、「こんな話になったら面白いよねー」なんて、デスクにいながら裁可を下す上司がいらっしゃるのです。ここに「現場とデスクの温度差」が生じます。どこの世界にも共通しそうな話ですね。

たとえば、「楽して大もうけできるお得な情報」のつもりでロケに出てみると、現場は正反対。つらいばかりでまるでもうからない、というような事態です。そうなると通常は上司と相談の上、方向性を修正してさらに最悪の場合は勇気ある撤退となります。

ところがごくまれに、上司がとても厳しい人で現場のディレクターがへろへろの弱腰なんて組み合わせがある。その結果は、そう。成立させたいあまりに、既定の台本に事実を近づける方向に進むのです。事実の歪曲、ねつ造、やらせ。恐ろしい言葉です。なんとか上司に食い下がっても、どうしてもディレクターが持ちこたえることができず心がくじけそう……というギリギリのときには、別の安全弁が働きます。

「もしもそんなシーンだったら、俺はカメラを回さないよ」

とはカメラマン。

「生放送のスタジオで『あれは事実と違います』って絶対言うぞ」

これは、私。後にも先にもこんなセリフを吐いたのは一度きりです。ディレクターはすぐさまハッと我に返ったようでした。その時は、現場の全員が本当に極限状態で、事故はこんな瞬間に起きるんだろうなと冷や汗をかいたのを覚えています。

最後に、私が想像もしなかった安全弁の話をします。

生放送中。VTRが終盤にさしかかり、そろそろスタジオに下りてくるというときのことです。コメンテーターのひとりが私にさらりと言葉を投げかけました。

「ねえ。これって、ヤラセでしょ」

心臓が飛び出しそうになるとは、このことです。

「ど、ど、どこがですか?」

動揺しながらも指摘された点について手短に事情を説明すると、すぐに誤解も解けて心底ほっとしました。それにしても、放送上でのやりとりだったら冷静に対応できただろうかと今思い出してもドキドキします。生放送でも気後れせずにはっきり言いそうだもの、ピーター・バラカンさんは。ううむ、かっこいいなあ。

そんな「とくダネ!」を長年支えてくれた竹田圭吾さんが先日お亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします。

(次回、最終回は2月10日の予定)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>独演会2月6日、3月6日、4月13日の予定。吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は1月29日、2月21日、3月25日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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