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気が早いけど… 来年のおせちは自宅で作ろう

立川談笑

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NIKKEI STYLE

 新年最初の更新です。今年もよろしくお願いします。落語家の私としては、3日にNHKの東西寄席中継に出演したのがとてもうれしかった。お正月らしさあふれるあの番組に、いつか出たかったのです。司会の爆笑問題さんや中川家さんをはじめ、豪華な出演者に囲まれて気分も上々。いい仕事始めになりました。

正月気分も薄らいだところですが「伝統のおせち料理」の話をします。

「近ごろの若い人ったら、おせち料理をお店で買うんですって。やーねえ。昔はお母さんたちが台所で作って重箱に詰めてたものよねえ」

と嘆く人たちが、今もどこかにいるのかもしれません。その言葉通り、今どきは年末になるとデパートやスーパー、コンビニに至るまで「おせちご予約承り中」のポスターが街をにぎわせます。また、有名料亭や高級レストランがインターネット通販で届けてくれるおせち料理は、和洋中バラエティーに富んだ味わいに満ちています。当然ながら、それらを予約して買い求めるお客さんも多いということなのでしょう。

「どうも最近、おせち料理が変わってきた気がするなあ」

そうですか。そうでしょう。そこで、おせち料理とは何なのかを調べてみました。

まず、現代の一般的なおせち料理について。ええと、地方や家庭ごとの違いも大きいようですから、読む人によってはツッコミどころ満載だと思います。そこはあくまで私個人の体験と印象を中心に、ということでまずはご理解下さい。

おせち料理は年末に作って、明けてお正月は火を使わずに済む日持ちのするものを重箱に詰めます。「おせち」とは、節分だとか節句の「せち」。時節のお祭りのときに食べる特別な料理で、重箱に詰められるのはことごとくおめでたい品々です。

「数の子」はたくさんの子宝に恵まれますように。「昆布巻き」は喜ぶのコブ。「海老(エビ)」は腰が曲がるほどの長寿を願って。「鰤(ブリ)の焼き物」は鰤が出世魚だから縁起がいい。「紅白なます」と「紅白のかまぼこ」は紅白だからおめでたい。わはは。もう、まるで古典落語「寿限無」です。赤ん坊に長生きする名前をつけてもらおうと、和尚さんにおめでたい言葉を挙げてもらいそれを全て名付けてしまうという。あの落語をほうふつとさせる、おめでた&ラッキーアイテムの盛りっぷりです。

さらに。「田作り」とは、小さな鰯(イワシ)を稲作の肥料に使ったところ豊作になったことからおめでたい。おっと、この辺からウィキペディアあたりの受け売り情報が交じってきます。

「伊達巻き」は奉書や巻物をイメージしていて学業向上を願う。これも知りませんでした。思えば我が家でも母が作ってました。年末になると大量のむき海老をすり鉢でゴリゴリとすってて。わくわくして横から見ていると無謀な量の砂糖がドカンと投入されて甘ったるいシロモノが出来上がる。普通に海老のまま焼いて食わせてくれよと心底願ったものです。あの甘い伊達巻きと桜でんぶは残念だったなあ。

関西では「叩きごぼう」。ごぼうは根菜だから根強くっていう縁起かつぎなのでしょうか。京風幕の内に入ってたりする、ちょっと酸っぱいあれが入ってるそうです。あと、「にらみ鯛(タイ)」が面白かった。鯛の塩焼きですが、三が日の間は誰一人箸をつけちゃいけないんだとか。その間ずっとみんなで見つめているだけだから、「睨(にら)み」鯛。

そんな東西ひっくるめた「おせち」の、そもそもを。

登場の歴史は奈良時代までさかのぼるといいます(注・資料を踏まえた私の解釈でざっくりと話します。必ずしも正確ではありませんので、念のため)。中国から律令制度だの何だのと導入する一環で、日本でも「節句」の行事が始まりました。その「節会(せちえ)」で供されたのが「おせち」のはじまりというわけです。

といっても当時ではずいぶん趣が違うようで。炊いた飯だとかを神様にお供えして、しかる後にそのお下がりをいただいたと。ふむ。「料理」というよりはずいぶん「お供え」っぽくて、いうなれば新嘗祭(にいなめさい)に似た雰囲気すら感じます。その後、時代によってはお供えするだけで食べなかったという話もありますから、かつての「おせち」とはどうやら現在の「お供え餅」のような立場だったのではないかと私は想像しました。

一方で、「重箱料理」。こちらは「おせち」とは別の流れです。江戸文化が爛熟(らんじゅく)した文化文政時代(およそ200年前。初代立川談笑の時代です)に、料亭で「重箱料理」は発展しました。店内ばかりでなく、花見や芝居、相撲見物の折にも仕出しとして提供されたりして、どこでもさぞ華やかな彩りを添えたことでしょう。堂々たるごちそうの最高峰。キングオブキングです。

そして1500年もの「おせち」の伝統が、100年磨かれた「重箱料理」文化と融合します。そんなハイブリッドな「重箱式おせち料理」が誕生したのが、明治時代。どこぞのお金持ちが新年に料亭で遊んだのが始まりなのか。はたまた大邸宅での新年会にお歴々を招いて、豪勢な重箱料理をずらりと振る舞ってみせたのか。

ともかく、誰もが新年行事のお供え物として地味な物と思いこんでいた「おせち」が、「重箱式おせち料理」として革命的に派手に、おめでたく、おいしく生まれ変わりました。これは、時代ががらりと変わった文明開化ならではの冒険であり、暴挙だったのかもしれません。

そんな革新的な「重箱式おせち料理」が世間一般に広まったのは、なんと戦後。デパートが売り始めたのがきっかけだったのだといいます。そして日本中が伝統的なおせち料理として重箱におめでたいものを詰めるようになりましたとさ。めでたし、めでたし。

おお、なんたる衝撃!!! もしもこの話が本当なら、信じがたいことに今どきの我々にとって親しみのある「重箱式おせち料理」とは、料亭やデパートで買い求めることこそが本来だったというのですよ。

家庭でおせち料理を作って重箱に詰めるのは、むしろ例外だった。しかも、それはほんの30年や40年くらいの短い歴史だったのかもしれないのです。「伝統」といっても変わりすぎじゃないか、おせち料理!というか、どこまで柔軟なんだ、日本人。

よーし、家庭でおせちを作る新しい派の皆さん。気が早いけど、この年末も台所で頑張りましょうね。おせち料理、家で作るぞー!!!(たまに買うかも……)

(次回は1月27日の更新予定)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>独演会2月6日、3月6日、4月13日の予定。吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は1月29日、2月21日、3月25日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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