「子育てと仕事、悔いのない選択を」 太田洋子さん
野村証券金融工学研究センター長
機関投資家の資産運用戦略や企業の事業価値の評価を研究する野村証券・金融工学研究センターのトップに就任、「最先端の金融技術の発展をけん引する」と意気込む。男性が多い証券業界のなかで、子育てと仕事を両立し活躍する。
1990年に野村総合研究所の女性総合職第1期生として入社した。新入社員200人中、女性は2人だけ。機関投資家が資産運用の指標として使う、株価指数の開発部署に配属された。専門的な数式などを扱うため、周囲は理系出身者ばかり。経済学部出身の太田さんは指数計算に使う株価データの精査などを、ひたすらこなしていた。
転機が訪れたのは海外赴任を経て野村証券に転籍後、センター前身の投資技術研究部に配属されてからだ。当時は企業の間で事業の取捨選択・再編が相次いでいた。そこで、「事業が持つ価値」といったとらえにくい概念を金融工学の視点から計算し、数値化する新しいサービスの開発に取り組んだ。
前例のないサービスのため、顧客の理解を得るのは簡単ではなかった。全国の顧客企業を回り、勉強会を開くなど啓蒙活動を続けた。一向に契約が決まらず、出張先の名古屋駅で涙したこともある。試行錯誤を重ね、初めて契約を結んだのはサービス開始から1年後。「入社して初めて、ゼロから新しいものを作り出した経験だった」
39歳で出産し、働くことへの考えは変化した。「それまで仕事に関しては自分が何でもやる、ととがった部分があった」。育児経験を経て人を育てることへの関心が強くなり、後輩指導に力を入れるようになった。
2011年からは野村の社員ネットワーク「ウーマン・イン・ノムラ」の初代リーダーを務めた。「子どもが欲しいけど、昇格などタイミングはどうか」「産んでからの仕事はどうなるのか」。こうした相談に乗り、女性のキャリア形成を後押ししている。
「仕事と子育てを両立できるかは人それぞれだし、正解もない。ただ産みたいのに仕事が理由で産まないのは残念だ。人生を見据えて、悔いのない選択をしてほしい」
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