「失敗すれば人が死ぬ」 アニエス・マカイユさん
国連地雷対策サービス部部長
毎年約1万5000~2万人が地雷や不発弾などで死亡している。ほとんどは非戦闘員の市民で、子供だ。国連で地雷除去や住民向けの安全教育を手掛けるのが地雷対策サービス部(UNMAS)。初の女性トップとして約1万3000人のスタッフを率いる。
米ニューヨークを拠点にしつつ、アフリカや中東など世界中を飛び回る。現場との連絡は昼夜も休日も関係ない。2014年はイスラエル・ガザ地区の戦闘地域で、国連本部から要請があった4日後には200カ所以上で地雷などの爆発物処理を完了。援助関係者が現場に入る環境を整えた。「私たちが仕事を失敗すれば、人が死ぬ」という事実が突き動かす。
国際問題がお茶の間の話題という家庭で育った。第2次世界大戦で戦った経験がある父親は記者で、いつもニュースを伝えるラジオが流れていた。弁護士などを経て25歳で国連職員になったのは「自然な選択だった」。
国連では安全保障や軍縮を担当し、化学兵器の禁止やイラクの武装解除に携わった。母国語のフランス語は国連公用語だが、実際の業務は英語がほとんど。「言葉には苦労した」と苦笑いするが、アナン事務総長時代には副報道官を務めた。
12年、UNMAS部長に手を挙げたのは専門分野への自信と「この分野で女性がリーダーになることが大切だと思った」からだ。「世界の半分は女性。紛争からの復興に女性の視点を取り入れることはフェミニズムではなく、ビジネスの観点から必要」
住民女性の活用に熱心だ。「ゲリラ戦や自爆テロで女性が使われている。平和構築で活躍していけない理由などない」。復興を進める南スーダンで、事務所の清掃員だった女性らが高度な地雷処理機の操作を学んで次々と活躍していることをうれしそうに話す。コロンビアではスタッフの半分が女性という。
UNMASは年間約40万個の地雷を処理しているが、過激派組織「イスラム国」(IS)が猛威を振るう中東など「あちこちで新たな火が起きていて、消防車が足りない状態」と表情を引き締める。道のりは果てしなく長い。
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