「ファッションで社会に貢献する」 花澤菊香さん
VPL最高経営責任者
米国のファッション業界で活躍する日本女性の代表格。「アスリージャー」と呼ばれる高級衣料品の旗振り役を果たし、自社ブランド「VPL」製造とともにセレクトショップを運営する。女優スカーレット・ヨハンソンがVPLを着て雑誌の表紙を飾るなどハリウッド女優の御用達ブランドでもある。
「アスリージャー」とは「アスレチック」と「レジャー」を合わせた造語だ。ヨガやフィットネスなど運動時に着用できる機能性と高いデザイン性を兼ね備えた衣料品のこと。その流行は欧州や中東にも広がっている。
著述家・着物デザイナー宇野千代さんの下で働いた母と、サラリーマンをやめ天台宗の住職になった父の一人娘として育つ。母の職場に行く機会が多く、幼い時から衣料品に囲まれていた。ファッションは女性が主導権を握る業界だ。「女性が仕事場を仕切って当然」と見て学んだ。
志望校受験に失敗、入った大学が退屈で一念発起、日本を飛び出し米ニューヨーク市のコロンビア大学の美術史学科に転籍した。勉学の傍ら仕事をするうち「女性の意見が尊重され、仕事ができれば認められる」ファッションの道を選んだ。ハーバード大で経営学修士(MBA)を取得後、アパレル企業で修業を積み、英国人デザイナーと組んでつくったのがVPL。この間に結婚、2人の息子を出産した。
東日本大震災直後にニューヨークのファッション業界の第一線で働く日本人女性に呼びかけて非営利団体の「ファッション・ガールズ・フォー・ジャパン」を設立。高級デザイナーの衣料品バザーで3000万円を超す義援金を集めた。
活動範囲を世界規模に広げた。直近はネパール地震被災者を支援した。リーダーシップがかわれ昨年、フォーブス誌アジア版の「48人の慈善家」に楽天創業者の三木谷浩史氏らと並び選ばれた。
「『衣職住』というぐらい衣料品は生活の根底にある。そのビジネスが共同体に利益を還元するのは当然だし、社会的責任を明確にできるビジネスモデルを確かなものにしたい」と固い決意を見せた。
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