「道は自分で切り開くものだ」 高橋はるみさん
北海道知事
激戦となった4月の北海道知事選で4選を果たし、女性知事では最多当選の記録を塗り替えた。だが、万歳直後に喜びの笑顔はもう消えていた。「選挙に勝つことが目的じゃない」。12年間にわたり行政トップの重責を担ってきた冷徹な政治家の顔がそこにはあった。
学生時代は花嫁志望だった。父に勧められた男性とお見合いし「そのまま結婚するつもりだった」。しかし結婚には至らず一転して猛勉強を重ね官僚の道へ。通産省に入って2年後、大物政治家に出会う。時の宰相、大平正芳氏だ。総理大臣補佐官室に係長として送り込まれた。
政治家の仕事ぶりは「強烈な印象」となって後々まで残る。大平政権はブレーンを駆使し「田園都市国家構想」など多くの長期戦略を打ち出した。将来ビジョンをしっかり持つ重要性を肌身で感じた。雑用係ではあったが徹夜続きも苦にならなかった。
パリ駐在研究員を経て中小企業庁などで管理職を務める。その間に2児を出産。毎朝5時に起きて子どもの弁当をつくった。仕事と育児の両立に悩むこともあったが「仕事が好きだから続けてこられた」。支えてくれた夫への感謝を忘れない。
信条は「肩の力を抜いてやりたいことをやる」。1人の女性として結婚したいし子どもは欲しい。遊びだって必要だ。我慢することはない。「働く女性のパイオニアという意識はまったくない」
2001年に札幌に赴任した。美しい自然に触れ「北海道に一目ぼれした」。ところが当時は北海道拓殖銀行の破綻などがあって道民の心は沈んでいた。自分に何ができるか。知事選への出馬を決意する。1期目に胃がんの摘出手術を受けたが、入院中も病室で道幹部と打ち合わせを続け、仕事に没頭した。
「私の前に道はない。道は自分で切り開くものだ」。当選を重ねるたびにそんな思いが強まる。前例を崩すことは「楽しいしワクワクする」。
道庁職員1万3千人を束ねる知事の役割をオーケストラの指揮者になぞらえる。理想の旋律を奏でるため、多彩な政策集団をどうまとめ上げるか。新たな楽章が始まった。
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