ハチドリは、蜂よりも蛇よりも「ガ」に似ているコスタリカ昆虫中心生活

2015/4/5
ナショナルジオグラフィック日本版

National Geographic

ぼくはダニです…えっ、鳥ではないかって?

写真の中におります。さて、どこでしょう…。答えは後ほど下の写真で。

というわけで今回はダニの話…ではなく、前回(「チョロチョロ…ヘビのように舌を出すハチドリ」を参照)に引き続きこの鳥、ハチドリの話です。全部で6種のハチドリの写真を掲載しているのでお見逃しなく。

日本のホウジャクに似たスズメガ(Aellopos ceculus)。前翅の長さは20 mm。 バルビージャ国立公園、コスタリカ

さて、世界で一番小さい鳥として知られるハチドリ。生息するのは南北アメリカ大陸で、アラスカにも南米の南の方にもいるけれど、たくさんいるのは中南米。あのペルーのナスカの地上絵にも描かれている。

日本語でハチドリと呼ぶのは、予想通り昆虫のハチ(蜂)の羽音に由来する。英語名ハミングバード(Hummingbird)も、ハミングには「ブンブン音をたてる」の意味があるから同じような感じだ。

では、コスタリカで話しているスペイン語ではどうかというと、ハチドリを「コリブリ」と呼ぶ。コスタリカ人の友達カルロスによると、「もしかするとラテン語のヘビ(colubris)に由来するかもしれない」とのこと。かつてヨーロッパからカリブの西インド諸島に移り住んだ人たちが、この「すばしっこくなわばり意識が強い、ちょっと攻撃的な鳥たちのことをヘビと照らし合わせたのかもね」と言う。

前回、ハチドリがヘビっぽいしぐさをすることを紹介したけれど、昔の人もハチドリにヘビを感じたのだとしたらとても面白い。

ところで、ぼくがハチドリを見ていつも思い浮かべる動物は、実はハチでもヘビでもない。蛾(ガ)だ。スズメガの仲間のホウジャクやオオスカシバは、ハチドリより少し小さめだが、ホバリングしながら花の蜜を吸うところがそっくり。コスタリカにもよく似たガが何種かいて、昼間に飛び回っている。

「ハチドリ」ならぬ、「ヘビドリ」? 「ガドリ」?

…やっぱり、「ハチドリ」がええわ~(笑)

さて、冒頭のクイズの答えですが、下の写真をごらんください。

ミドリボウシテリハチドリのくちばしに便乗しているホソゲマヨイダニの仲間 Hummingbird flower mites on the beak of Green-crowned Brilliant, Heliodoxa jacula ダニは白い矢印の部分にいます。飛行中のミドリボウシテリハチドリのくちばしの付け根に白いダニが数匹ついていた。植物の花の蜜や花粉を食べるダニで、ハチドリが密を吸っている間に素早くくちばしに乗り、花から花へと移動する(ダニの体長:約0.5 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ)
クロスジオジロハチドリのオス(左)とムラサキケンバネハチドリのオス(右) A male Stripe-tailed Hummingbird, Eupherusa eximia and male Violet Sabrewing, Campylopterus hemileucurus どちらも翼を猛スピードで羽ばたかせているにもかかわらず、胴体がぶれていない。ハチドリは1秒間になんと50回以上羽ばたく。ハトが5回ほど、スズメが10数回だから、スゴイとしか言えない。ぼくも腕を羽ばたかせてみるが1秒間に5回が限度だ(体長:それぞれ約10cm と 15cm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ)
吸蜜と排泄中のクロスジオジロハチドリのオス A male Stripe-tailed Hummingbird, Eupherusa eximia, feeding on and voiding 風が強く小雨が舞う中でも、突然姿を現し、せわしなくナガボソウ(Stachytarpheta frantzii)の花の蜜を吸う。次の瞬間、おしっこをした。よく見ていると、頻繁におしっこをしている(体長:約10cm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ)
ミドリボウシテリハチドリのオスの全体像 A male Green-crowned Brilliant, Heliodoxa jacula (体長:約13cm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ)
シロエリハチドリのオス A male White-necked Jacobin, Florisuga mellivora 低地から標高1000mまでの熱帯雨林に棲む。花の蜜以外に、よく空中を行き来し、小さな昆虫を捕まえて食べるそうだ。ぼくが出会ってきた他のハチドリに比べ、眼が大きく感じられるのは気のせいか…(体長:約10cm 撮影地:シキレス、コスタリカ)
シロエリハチドリのメス A female White-necked Jacobin, Florisuga mellivora まるで「空気を操る」かのようにアクロバット的な飛行ができるのは、頻繁にエネルギー源(糖分)を補給しているおかげ。そのために日々せわしなく、蜜が吸える花の場所を把握し、順路を決め巡回するのである。ちなみに、そのエネルギー源を体に巡らせる心臓の鼓動回数(心拍数)は、1分間に250~1200回以上。ちなみに人間は60~100回(体長:約10cm 撮影地:シキレス、コスタリカ)
ヒノドハチドリ Fiery-throated Hummingbird, Panterpe insignis くちばしの下側が赤く、翅の構造色が多彩。コスタリカ北部の火山帯からパナマの西側の高山にすむ。右の写真は、ツツジ科のシラタマノキの仲間の花の蜜を吸っているところ。体重は5~6グラムだそうだ(体長:約10cm 撮影地:セロ・デ・ラ・ムエルテ、コスタリカ)
バラエリフトオハチドリのメス A female Volcano Hummingbird, Selasphorus flammula 標高3000 mを超える山の上の朝、「お腹いっぱい」の様子で、フクシア・マゲラニカ(アカバナ科)の枝にしばらくとまっていた(体長:約8cm 撮影地:セロ・デ・ラ・ムエルテ、コスタリカ)

最後に、ピソちゃんの様子です。先日、NHKの取材協力でカルタゴ県にあるタパンティ国立公園に出向いたときに、若い3頭のピソちゃんに出会った。こちらをあまり気にせず、夢中で地面を掘って食事をしていた。親離れして間もないのか、まだおぼこさが感じられた。(編注:おぼこい=「うぶな」「初々しくて未熟な」を意味する関西、西日本でよく使う言葉)

西田賢司(にしだ けんじ)
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学でチョウやガの生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[Webナショジオ 2014年2月25日付の記事を基に再構成]