ムラサキ仮面ライダー 熱帯のバッタ、3つの必殺技
コスタリカ昆虫中心生活
鮮やかな赤い花…。
違うんです。この写真は花でも葉っぱでもなく、バッタが後ろ翅(はね)を広げたところ。敵に襲われたときの必殺技のうちのひとつ、鮮やか赤色威嚇~だ。
この翅(はね)の主、カタハダバッタの仲間は、熱帯アメリカに生息していて、コスタリカでは約40種が確認されている。バッタの中では最も大きな体をもつグループで、体長が13センチ、翅を広げると25センチにもなる種もいる。
幼虫も成虫もカラフルというか、どこかグロテスクな色彩をしている。毒々しさをアピールしているのだろう。群れをなして、葉の表に堂々と居座っているところや、毒性がきつそうなサトイモ科の葉っぱなんかをムシャムシャと食べているところを見かける。飛ぶのはあまり得意でないみたいで、近くに寄っても、あまり逃げようとはしない。
そんな堂々たる態度でいられるのは、このバッタが必殺技をいくつか持っているからだろう。敵の攻撃に遭うと、さきほどの「後ろ翅鮮やか赤色威嚇」のほか、胸からシューシュー音を放出。さらには気門(呼吸をする穴)から異臭泡発射と、色、音、化学物質の三つの技で身を守る。
仮面ライダーの新キャラに起用…とまではいかないかもしれないが、なかなかの技の持ち主だ。
ナスがこんなに人気あるやなんて…
雨粒にぬれたナスの花で、雨を惜しむように休むマルウンカの成虫(上の写真、体長6ミリ)。どこかせつなさを感じる。雨期もそろそろ終わり、乾期へと突入していくコスタリカ。雨量が減ってきて、直射日光が当たる時間が増えたので、わが家で栽培している研究用の植物に水をやり始めないといけなくなってきた。
その中に、鉢植えのナスがある。
もともとナスという植物はコスタリカには生えていなかったが、食用に栽培されていて、スーパーマーケットの野菜売り場にも置いてある。家のナスの木にも、ちゃんとぼくの好物のナスの実がなるが、かなり小ぶりで、スーパーで売っているのに比べて10分の1程度だ。
収穫して料理するのも楽しいけど、ナスに入居する昆虫たちを観察するのもやっぱり楽しい。ツノゼミやマルウンカ、ヨコバイなど、もともとこの近所に生えているナス科の植物に住んでいた昆虫たちの幾種かが、わが家のナスに引っ越してきて、住みついてくれたのだ。
いや~でも、ナスがこんなに人気があるとはビックリ。庭の昆虫の多様性がグンとアップした感じ。
小さな昆虫たちとナスの星型トゲトゲ毛が織り成すミクロな風景のマクロ写真をどうぞご覧ください。えっ、トゲトゲで昆虫たちは痛くないのですかって…おそらく痛くないでしょう。
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学でチョウやガの生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html
[Webナショジオ 2011年12月6日、同12月20日付の記事を基に再構成]
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