ディズニーが和製スター・ウォーズ 日本アニメ争奪戦
米ウォルト・ディズニーの動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」は、映画「スター・ウォーズ」シリーズを題材にした短編アニメ企画「スター・ウォーズ:ビジョンズ」を立ち上げた。日本のアニメ制作会社7社による9作品を2021年9月22日から世界で独占配信する。「Netflix(ネットフリックス)」をはじめとする世界的な動画配信サービスによる日本アニメの争奪戦が過熱しそうだ。
「スター・ウォーズ:ビジョンズ」に参加するのはジェノスタジオ(東京・杉並)、プロダクション・アイジー(東京都武蔵野市)など計7社。いずれもテレビアニメや劇場アニメで実績のある制作会社だ。
スター・ウォーズ:ビジョンズは、世界のトップアニメクリエイターたちが独自の視点で「スター・ウォーズ」の新たな物語をアニメ作品として紡いていく一大プロジェクト。その第1弾として日本が選ばれたのは、「スター・ウォーズ」にとって日本は、作品創造のルーツともいえる国だからだ。
「スター・ウォーズ」シリーズを制作してきた米ルーカスフィルムのエグゼクティブプロデューサーであるジェームズ・ウォー氏は、プロジェクトのキックオフイベントに「日本のアニメは、長期にわたってルーカスフィルムにインスピレーションを与え続けてくれた。この作品はそんな日本のアニメを生んだ日本文化へ贈る、ルーカスフィルムからのラブレターだ」とのビデオメッセージを寄せている。
スター・ウォーズの原点を別の主人公で
またテレビアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(スタンドアローンコンプレックス、S.A.C.)」シリーズなどで海外でも知られる神山健治監督は、自身が監督する「九人目のジェダイ」について、「ルーク・スカイウォーカーという名もなき青年が大海原に旅立って行き、冒険を繰り広げるのがスター・ウォーズ作品の原点。それをもう一度、別の主人公で描こうと思った」と語った。
「僕は13歳のときに初めて映画(スター・ウォーズ、1977年、米国)を見て、『スター・ウォーズ』を作る人になろうと思った。今は喜びしかない。無邪気な13歳のころの気持ちに戻っている」(神山監督)
近年、競争が激化している動画配信サービス事業者の間では、世界的にも評価が高い日本のアニメ制作会社との関係を強化する取り組みが活発だ。
代表格は米ネットフリックス。18年にプロダクション・アイジー、ボンズ(東京・杉並)という2社と包括的業務提携を結んだのを皮切りに、現在は8社と提携している。複数作品の契約を結ぶことで現場がアニメ制作に集中できる環境を提供するとともに、日本アニメ作品のラインアップを充実させるのが狙いだ。
また米アマゾン・ドット・コムの動画配信サービス「Amazon Prime Video(アマゾン・プライム・ビデオ)」は、庵野秀明監督による映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(2021年、日本)の独占配信を21年8月13日から海外240以上の国と地域で開始する。
Disney+は19年配信開始と後発ながら、ディズニー作品をはじめとする豊富なオリジナルコンテンツを武器にNetflix、Amazon Prime Video、Huluなどとしのぎを削っている。
これまで日本アニメの配信にあまり積極的でなかったDisney+だが、今回のプロジェクトで一転した。日本のアニメ作品をめぐる大手動画配信サービス間の競争はますます激化しそうだ。
(フリーライター 堀井塚高、日経クロストレンド 平野亜矢、写真提供 ウォルト・ディズニー)
[日経クロストレンド 2021年7月20日の記事を再構成]
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