――予防とロボットをどう結びつけたのでしょうか。

「ゼミ生の中に、高齢者の(足腰が弱る)ロコモティブシンドローム(運動器症候群)をロボットを使って防ぎたいと考えている四国の整形外科医の方がいたんです。私が考える予防医学とのつながりを感じて、私も研究してみようと」

高齢者にスクワット運動を促すために開発したロボット「ロコピョン」

「高齢者にロコモティブシンドロームの予防効果がある運動を促せないかと考えたのが、一緒にスクワットしてくれるロボットです。それを国際ロボット展の大学ブースに展示したら、センサー機器メーカーの旭光電機(神戸市)の方から『もし大学院で研究を続ける思いがあるなら、ぜひ一緒に』と声をかけられました」

――それで大学院への進学を。

「大学院、どうやって入るのかなあと思ってゼミの先生に聞いたら、取得した単位の平均点を出して、一定以上なら推薦もあり得ますよって。調べたら、その点数よりも高かった。主人にも大学院に行かなかったら意味ないと後押しされて、推薦で修士課程に進学しました。そして共同開発したのが『ロコピョン』。毎日決まった時間にかけ声を出して、正しい姿勢で一緒にスクワットしてくれるロボットです。現在はAIベンチャーのエクサウィザーズ(東京・港)と新しいバージョンを共同開発中です」

バリバリの研究者でないからこそ

――工夫のポイントは何ですか。

「高齢者に貢献するものであることを、すごく考えました。若い人なら、ロボットの制御をしたり装置を身につけたりすることは簡単にできると思うんですが、それが難しい場合にどうするか。『いやいやこれはロボットじゃねーだろ』『小学生が作ったんじゃないの』って言う人もいるかもしれない。でも、バリバリのロボット研究者ではないゆるさで、困っている人たちのサポートを考えたからできた形だと思っています」

――もともと勉強好きでしたか。

「嫌いではなかったかもしれないですね。小学校までは結構、勉強していたんですが、中学受験で合格してしばらく安泰になったら、勉強しなくなっちゃいました。たぶん勉強が好きじゃない方の部類なんですが、『乗り越えたい体質』というかゲーム感覚で壁を克服したいタイプなので、大学での勉強はあまり苦にならなかったかもしれない」

――「乗り越えたい体質」はどこから。

「リポート提出やテストを前にすると、具合が悪いとか仕事が忙しいとか、言い訳が頭をよぎるんですが、そのときに『私が大学に入ったのは人に恩返ししたいからで、言い訳を考えている暇があったらやりなよ』って自分に言い聞かすようにしていたんです。それでうまくいったとき、満足物質が脳内にどわーって放出されるんですよ。脳内麻薬ですね。その喜びをまた感じたい、と続けているうちに『乗り越えたい体質』になったような気がします」

――博士課程に進んだ理由は。

「修士課程では私がやりたい恩返しにたどり着けていないな、と思ったからです。でもロボット工学の先生は博士課程を担当していなかったんですね、残念ながら。それで、ずっと興味があって単位も取っていた基礎老化学を考えました。面接ではロボットと、バイオ系の基礎老化学は全く違うと言われて、ちょっと意地悪な質問もされましたが、基礎老化学の知識はもっていたので、なんとかクリアできました」

「博士課程のテーマは体の中からの抗老化で、細胞に作用して老化を防止する成分について研究しています。ロボット研究も、エクサウィザーズで続けているところです」

――体の中からの抗老化とは。

「食事を30%制限されたアカゲザルは、満腹まで食べていたサルと比べて30年後の見た目が若いまま保たれるという過去の研究結果があります。それで、人間も同じようにカロリー制限すると老化を遅らせられるのではないかと考えられているんです。ただ、カロリーを30%減らすってめちゃくちゃ大変じゃないですか。それで私が授業を受けた基礎老化学の教授は、細胞に摂取カロリーを実際の70%と勘違いさせる成分をさがしているんです」

「かつてレスベラトロールという成分にその効果が期待されたんですが、実際はあまりにたくさんのレスベラトロールを摂取しないとその効果が発揮されないことがわかったんですね。私はもっと現実的な成分をさがしていますが、そう簡単にはいかず、はっきり有望といえる成分は見つかっていません」

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