首元から全身を温め、AVAの収縮を防ごう
では、AVAの収縮を抑え、冷えを効果的に防ぐにはどうすればいいでしょうか。平田さんによると、前述した通り、AVAはあくまでも全身の体温調節のトータルバランスの中で開閉し、手先などを部分的に温めても開かないため、全身の体温をいかに効率よく上げるかを考えるとよいそうです。具体的な対策は次のようになります。
1 首をマフラーなどで温める
皮膚には冷たさを感じる「冷点(れいてん)」というものが存在するが、全身の中でもその分布密度が多く、感度が高いのは「首」や「顔」。従って、「首元をマフラーなどで温める、マスクをするなどは効果的」(平田さん)だ。
2 襟元の開口部は閉じる
襟元と下部を開けていると、下から入った空気が上に抜ける「煙突効果」で冷えやすい。下部を閉じていても、上から入って温まった空気がまた抜けてしまい胸や背中などの温度も下がる。そのため、襟元のボタンは閉じる、タートルネックの服を着る、手首や足首も覆って空気の出入り口(開口部)を塞ぐほうが効率的に温まる。
3 広い面積の温度を上げる
前述したように襟元を閉じるなどすれば胸やおなか、背中など広い面積で皮膚の温度が高くなる。「たとえ0.1度でも広い面積で温度が上がれば、脳の体温調節中枢に『もう十分温まった』という情報が伝わり、AVAが開き始める」(平田さん)
4 手はカイロよりも手袋
手を温める場合は、カイロなどで局所的に温めるよりも手袋で手全体を覆うほうが、全体の表面積の5%に相当するので効果的だ。
5 手袋・靴下こそ吸湿発熱素材
手のひら、足の裏は不感蒸散(私たちが感じることなく皮膚から蒸散する水分量)が他の皮膚よりずっと多いので、吸湿発熱素材(吸湿量に比例して発熱量が多くなる素材)でできた手袋や靴下がより有効。手袋や靴下だけでなく吸湿発熱素材のシャツも有効だが、暖房のきいた室内などでは人によっては汗をかいてシャツが湿り、その汗が乾いて蒸発するときに体温を奪われて冷え過ぎることがあるので注意が必要だ。
6 重ね着をして空気の層をまとう
衣服の保温性は、繊維と繊維の間にどれだけ温まった空気があるかによっても左右される。どんなに薄い繊維でも空気より熱の伝導度は高いため、1枚、2枚と重ね着するほど、間の空気層も厚くなり、より温かい。
【図2】冷え防止にはこんな格好が理想!?

効率的に皮膚温を上げ、皮膚周辺の熱を逃がさないことが冷え対策のポイントだ。自分の体形やライフスタイルではAVAがどのように働くかを意識して、うまく衣服を調節し、この冬の寒さを乗り切ろう。
[日経Gooday2020年12月14日付記事を再構成]