日経Gooday

答えと解説

正解は、(3)手先をカイロなどで温める です。

全身の体温調節のトータルバランスの中で開閉するAVAは、手先などを部分的に温めても開かないため、全身の体温をいかに効率よく上げるかを考えることが大事です。

通常、心臓から送り出された血流は、動脈の太い血管から末梢の毛細血管まで及び、静脈を通って心臓に戻っていきます。そして、毛細血管に枝分かれする前の動脈と、静脈とを直接つなぐやや太い血管がAVAです(図1)。

【図1】AVA血管とは?

(神戸女子大学教授の平田耕造さんの資料を基に作成)

AVAは、皮膚では手足の末端、顔の一部だけに存在する特殊な血管です。手の場合、甲側ではなく、手のひら側にあり、足では足裏と指、顔では耳、まぶた、鼻、唇と、皮膚の薄い末梢に多く、皮膚表面から約1mmと毛細血管より少し深いところに1平方センチ当たり100~600個存在します。拡張したときの直径は毛細血管の約10倍で、流体力学の法則から流れる血流量は1万倍にもなります。一方で、完全に閉じると血流量はゼロになります。

全身にある毛細血管は細胞に酸素や栄養を運ぶのが役割ですが、AVAにはそうした役割はありません。AVAと体温調節について研究をしている神戸女子大学教授の平田耕造さんによると、AVAの役割は「体温調節」。拡張して胴体部分から、熱を奪われやすい末端部分へ熱を運ぶことができるように、末端に多く存在しています。ただし、寒さが強くなると、AVAは収縮して末梢への血流を減らし、そこから熱が逃げるのを防ぎます。脳や心臓など生命維持に必要な体の中心部の温度を保つことを優先するためです。

そもそも腕のように胴体から飛び出した部位や手足の指、鼻、耳のように凹凸がある部位は、容積に対する表面積の割合が大きいため、広い面積から多量の熱が空気中に放散されて冷えやすいといえます。そのときにAVAが開いていると体の熱が手足の血流を通じてどんどん奪われてしまいます。そんな事態を防ぐため、寒いときにはAVAが収縮して末端への血流を減少させることで、体の熱が手や足を通じて逃げるのを防ぐのです。冬に手先や足先が冷えて困るのは、それらの部位を犠牲にしてでも命を守るための生物としての賢い反応というわけです。

さらに、動脈からAVAに入り、そこを通過した血流は、静脈を通る間にも、腕全体から熱を逃がすなどしながら心臓に戻り、体温を調節していることも分かっています。

「暑いときは皮膚表面に近い静脈を通って積極的に熱を逃がしながら戻り、寒いときには動脈と接する深部にある静脈を通ることで、動脈の熱をもらいながら温まった血液が心臓に戻ることで、うまく体温を調節しています」(平田さん)

AVAは全身の体温調節のトータルバランスの中で、快適な温度より暑ければ開き、寒ければ閉じます。私たちが意識しないところで微妙な感覚を感じ取り、体温を緻密にコントロールしているのです。

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首元から全身を温め、AVAの収縮を防ごう