お笑い芸人のニューヨーク YouTubeラジオの先駆者
特集 僕たちのラジオデイズ(5)
9月に開催された『キングオブコント』決勝で、結婚式の余興とヤクザのネタを披露し、準優勝したニューヨーク。現在テレビ出演が急増しているが、彼らのラジオにも関心が集まっている。それは、YouTubeを使って、毎週ラジオ番組を配信するというもの。YouTubeを使う芸人はまだ少数派だった2019年1月から、このスタイルで『ニューヨークのニューラジオ』をスタート。しかも生配信ということで、この分野の先駆けとなった。
屋敷裕政 ラジオは16年から17年まで『オールナイトニッポン0』(ニッポン放送)、17年から18年まで『アッパレやってまーす!』(MBSラジオ)をやってたんですよ。それが18年になくなって。その年、「キングオブコント」は2回戦、「M-1」は準々決勝で落ちたんですけど、賞レース次第で全部が決まるみたいな感じがしんどくて。それやったら、自分らでレギュラー番組みたいなの作ったらいいんじゃないかと思ったのが最初です。
嶋佐和也 僕もまたコイツとラジオをやりたいって気持ちがあって。ラジオきっかけで僕らを知ってくれたリスナーさんが結構いたんですよ。テレビにもそんな出てないし、そういう人たちに向けてコミュニケーションを取れる場があったほうがいいよなって。
まず始められたことに満足
屋敷 やるからには、2人だけでダラダラやるんじゃなくて、カチッと大人を入れて、プレッシャー感じるぐらいなほうがいいってことで、『オールナイトニッポン0』時代のスタッフさんに声をかけたんです。そしたら、すぐに「やろう」って乗ってくれました。
嶋佐 ラジオ配信だけでなく、同時に毎日何か動画を上げていくことにもなって。ラジオをたくさんの人に聴いてもらうために、YouTubeも広げておいたほうがいいかなっていう。
屋敷 でも何より、ラジオを始められたことに満足しましたね。機材をイチからそろえて。「これはいいぞ」って、うれしかったです。
嶋佐 昔のリスナーさんは反応してくれました。でもそのくらいで、全然登録者数が増えない(笑)。
屋敷 「芸人が面白いって言ってくれとるから、ま、ええか」って。
嶋佐 この間の「キングオブコント」でちょっと増えたけど、結局この2年弱、1回もバズったことがないんですよ。
屋敷 こんな時代ですが、動画が一人歩きしたことは皆無です(笑)。
放送局に縛られることなく、ラジオを発信してきた。自分たちでやることのメリットは?
屋敷 ラジオ局でやらせてもらって、スポンサーさんおったりすると、やっぱり緊張しますよ。今は自由で、でも緊張感がないわけでもなく、そのあんばいが絶妙です。
嶋佐 良かったなと思ったのは、新型コロナで劇場がストップしたとき。時間はあるから、毎日いろんなゲストを呼んで話すっていうのを勝手にやったんです。交通費程度で、先輩から後輩まで、1カ月くらいいろんな人が来てくれて。
屋敷 劇場の出番が入ってた人は、基本的にスケジュール空いてたからね。フットワーク軽くできるのは、このスタイルならでは。それに会社じゃないから、ディレクターが飛ばされることもないし。
嶋佐 「オールナイトニッポン0」のときの形を取ってるんで、90分なんですけど、2人で1時間近くしゃべって、最後10分ずつ、1人ずつのフリートークをするんです。強いて言えば、それが苦手(笑)。
屋敷 2人だけでやってたら絶対やめてる(笑)。でもスタッフの目線があるから。
嶋佐 「オレ、フリートーク嫌だ」は言えないですね、はははは!
屋敷 でもそれは健全やねん。仕事だから。本来、やらんでええことなんですけど、どっかに仕事っぽさはあったほうが。嫌なこともやるのは大事な気がする。
有料会員向けトークも視野
今後ラジオ局からレギュラーのオファーが入る可能性もあるが。
嶋佐 YouTubeでやりたいことはできてるんですよね。
屋敷 終わらされたり始まったりするのが、ちょっとうんざり、みたいな(笑)。もし声がかかったらありがたいですけど。
嶋佐 毎週はやっちゃってるし、単発だったらうれしいです。全く違う形の、例えばみちょぱと一緒だったりしたら全然やります(笑)。
屋敷 今考えてることがあって。昔はテレビに出つつも、深夜ラジオで好き放題やれましたが、YouTubeってアーカイブに残すものじゃないですか。先日久しぶりに、配信なしの単独ライブみたいなことをやって、余った15分でどこにも流せへんような話して、楽しかったんです。もう1個、オンラインサロンとかで、有料会員向けのトークをやってもええかなって。
嶋佐 それは確かにいいかも。
屋敷 Spotifyとか音声コンテンツがアメリカではめっちゃ人気あるじゃないですか。課金してもらって、自分らの好きなことしゃべるっていうのはありかなと思ってます。金儲けというよりは、お客さんを選ぶ感じ。100円だけでも、コメントの民度が全然変わるんで。『ニューラジオ』の目標としては、普段は生で見てくれている人は2000人くらいなんですけど、『キングオブコント』決勝のときは8600人ぐらいいたんですよ。アベレージで1万とか超えたら、また違う世界になりそう。
嶋佐 今『ニューラジオ』の輪が広がっていて、いろんな芸人が同じ形でやってるんですよ。僕はそれがどんどん大きくなっていったら面白いだろうなって。
屋敷 続けてきて良かったと思うのは、今テレビ出演が少しずつ増えていて、そこでラジオみたいな自分らが出せたときに手応えがあるんですよね。そのコツをつかんで、バラエティで常にそのモードを発動できるようにしたいです。
2人がフリートークを繰り広げる90分。2019年1月に開設した「ニューヨーク Official Channel」内で、毎週日曜に生配信している。「ニューラジオ」の名前は他の芸人にも広がっており、ダイタクのほか、オズワルド、ジェラードン、バビロンらが同様の形でラジオ配信している。(日曜22時~23時30分/YouTube「ニューヨーク Official Channel」で配信)
マイク1本、声だけでコミュニケーションするラジオは、タレントとリスナーの双方にとって親密度の高いメディアだ。再評価が進むラジオの魅力を、人気パーソナリティーたちに聞いた。
●草彅剛×香取慎吾(前編)「もしラジオがなければこの3年は…」
●草彅剛×香取慎吾(後編)「想像かき立てる見えないラジオの良さ」
●ナイツ(漫才コンビ)「ラジオ生放送、週15時間半の秘訣」
●ファーストサマーウィカ「深夜ラジオ、下ネタは知的に」
●ニューヨーク「YouTubeラジオの先駆者」
●山崎怜奈(乃木坂46)「ラジオの良さ、自分に似ている」
●空気階段「リスナーが親近感持つ理由は?」
●パパラピーズ「YouTuberがラジオで戸惑ったこと」
●工藤大輝(Da-iCE)
(聞き手 宮地ケンスケ、構成 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2020年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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