学校って何? オンラインの「N高」が問う存在意義日本の高校生はどこへ(上)

石井翔さんは、N高で出会った友人や先生の影響で、海外で働くことも考え始めた

「高校生だけどバックパッカーしてます」というのはN高3年の石井翔(いしい・しょう)さん。中学時代の不登校がきっかけでN高に入学した。朝起きるのがつらいといった症状がある起立性調節障害で、決まった時間に登校するのが難しくなった。人間関係でもめたわけではなかったが、徐々に足が遠のいた。「先生や同級生に会いたくなくて、外の世界をシャットアウトしていた」

N高ではネットコースに入学。起床がつらい時も助かることが選択の理由だったが、石井さんを変えたのは、実際に生徒が集まるリアルな場だったという。リズミカルに歌う「ラップ」やコミュニケーションのワークショップに参加。そこで、バックパック旅行が趣味のN高生に出会った。「高校生でバックパッカー?」。海外に行ったこともなかった石井さんは刺激を受け、気づけばその晩にベトナム行きの航空券を買っていた。費用はボウリング場のアルバイト代をあてた。

19年4月、ハノイを4日間、1人で旅した。「トラブルもあったけど、露天商の人と仲良くなるなど出会いもあった」。旅の魅力にとりつかれ、9月にはタイに友人と2人で出かけた。「オンラインのカリキュラムは、旅行とかバイトの予定を考えて、先取りで進めている」という。

「道は1つじゃないよ」

旅行を通じて英語をもっと勉強したいと思うようになった。プログラミングのスキルも磨き、将来はフリーランスで働きながら海外で暮らすことも思い描く。N高の文化祭実行委員も経験し、大学進学も考えている(20年度の文化祭は新型コロナウイルスの感染拡大を受け中止)。「小学校の同級生に、行動力がすごい、変わったなって言われた」と笑う。中学時代の自分に声をかけるなら「道は1つじゃないよと言いたい。敷かれたレールを進むのが人生ではないって」。

佐々木雅斗さんは「あっぷるささき」としてネット上に情報発信している

東京都内にある私立の小中高一貫校から高2の3学期にN高に転入した佐々木雅斗(ささき・まさと)さん。ネット上では「あっぷるささき」のネームで情報発信している。現在は慶大環境情報学部に在学中だ。

父の影響でアップルのコンピューターが大好きだった。米シリコンバレーにあるアップル本社の見学ツアーに参加したのが高2のとき。現地のエンジニアたちの熱量に圧倒された。同じころ、各界の専門家らが独創的なアイデアや卓越した技術をもつ17歳以下を支援する「未踏ジュニア」プログラムの対象にも選ばれた。

学校になじんでいなかったわけではない。ディベート部では全国大会で活躍し、未踏ジュニアになるための研究にも取り組んだ。忙しすぎて体調を崩し、帯状疱疹(ほうしん)が出た。それでも「学校ではすごいねと言われるばかりで、それ以上は成長できない気がした」。

N高に転入して「時間に余裕があるほうが人は想像力がわくんだと知りました」。登校は週3日。プログラミングを学びながら、ディベート同好会でも活躍した。動画メディアのベンチャーのインターンとして働くことも経験。米国滞在中にあった卒業式には、ロボットを通して参加した。N高は「多様性の極み」と思う。「普通の学校は地域、学力などのフィルターがかかるから、似たような子が集まりやすい。でも、N高はそのフィルターがぶっこわれている」

「1人でも自分をわかってくれる人がいれば、子どもは変わる」と語るN高の奥平博一校長

教室での授業をしないことへのアレルギー反応は、教育界に根強い。「商売上手」とやゆする向きもある。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた全国的な臨時休校は、「ネット高校」の存在に目を向けざるをえない空気を確実に生んでいる。

創立メンバーの一人で現在は校長を務める奥平博一さんは言う。「学校は建物ではないと思うんです。大切なのは、その子のことをわかって受け入れる大人や友達がいるかどうか。1人でも自分をわかってくれる人がいれば、子どもは変わる」

(藤原仁美)

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