驚きの筆記具・競馬新聞紙メモ…2019年の名作文具たち納富廉邦のステーショナリー進化形

nameLUNA/指をぬらす器具の画期的な進化

昔からある指先や切手をぬらすための器具が画期的に進化した「nameLUNA」(チロリ、税込み1620円)。ホワイトとイエローの2色がある

もう一つ、これも地味ではあるが、ものすごく画期的だと思ったのが、チロリの「nameLUNA」。いわゆる、切手を貼ったり、書類をめくったりする時に使う、切手や指をぬらす道具なのだけれど、従来のスポンジを使った製品に比べて、あらゆる面で大幅に改良された製品なのだ。ポイントはスポンジではなく、多孔質の珪藻(けいそう)土のような吸水体が使われていること。硬い磁器のような感触ながら、容器に入れた水を吸い上げて、表面が指や切手をぬらすのにちょうどいいくらいに湿るのだ。

そのため、スポンジのように水が出過ぎることもなく、また煮沸消毒できるので清潔を保つことができる。使っていてとても気持ち良く、できれば全国の郵便局やコンビニに置いてもらいたいと思うくらいだ。

用途も使い方も、従来のものと全く同じなのに、素材が変わるだけで、驚くほど扱いやすい製品になるという好例だろう。普通に使えているからと、従来の製品を使い続けるのではなく、そこで感じていたストレスを軽減する工夫を重ねるのが、2019年の文房具の流れだったようにも思う。この「nameLUNA」は、その代表。とにかく一度使ってみてほしい。スポンジには戻れない気持ち良さがある。

湿り具合がちょうど良く、必要なだけの水分が得られる。メンテナンスも簡単で、月をモチーフにしたデザインも悪くない。ネーミングがダジャレなのはご愛嬌(あいきょう)

HD-10TL/プロの使い方を考え抜いたホチキス

「プロスペック」とうたうホチキス「HD-10TL」(マックス、税込み880円)。カラーは4色

マックスの道具ホチキス「HD-10TL」は、従来の製品から、現場での使用に特化した機能を抽出して、徹底的にプロ仕様に仕上げたホチキスの名作。

世間に「プロ用」という製品は多いけれど、本気のプロ用は、プロでない人には使いにくいことが多い。それはプロが求める機能や性能が、一般とは違っているからで、自分ごとながら、私がプロデュースした「Note Me」(スーパークラシック)という取材用ノートケースは、見事なまでにプロのライターか編集者にしか売れない。

この「HD-10TL」も、フラットクリンチ機構を捨てて、とじるものを差し込みやすいようにしたり、ストロークは短いのに軽くとじられる新機構を投入したり、見た目のかわいさや派手さより持ちやすさや耐久性を重視したデザインにするなど、大量にホチキスとじをする際の使い勝手や、様々な状況でも使えるなどの、現場での使用に徹している。

ブリスターパック(製品の形状にかたどった透明なプラスチックと平らな台紙を組み合わせた包装)の端も留められるし、逆手で持って、そのまま立てて置けるようになっているし、針も150本入る(通常のホチキスは100本が多い)。質実剛健はもちろん、実際に大量にホチキスで何かをとめる現場が求めているものをきちんと形にしているのだ。誠実なデザイン、誠実な製品作りとはこういうことではないか。しかも、この価格。ビックリである(記事「軽とじ・フラット仕様 いつのまに進化、最新ホチキス」参照)。

針の残量が分かる窓、先端ギリギリでとじられる構造、逆手で握りやすいデザイン、握る距離が短いのに軽くとじられる機構など、現場での使い勝手を集約した製品だ
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