図工はパパっと完成 でも大ざっぱ
女優、ミムラ
大ざっぱな性格に悩んでいます。思ったことはすぐ手をつけるので、図工の授業で絵などをパパッと仕上げます。でも、もっと時間をかけたクラスメートの作品と比べると、何か欠けている気がします。友達は私の絵を「いいね」と言ってくれますが……。この性格、どうにかならないかな。(大阪府・小学生・女性)
相談者さんはどんな作品を描くのでしょう。文章にワクワクしました。ひらめきをそのまま作品に乗せられる人は、芸術家として有望ですよ。のびのびとした構図や、さえた色づかいを想像します。
でも、あなたは悩んでいる。ここは頭を切り換えて言葉について考えてみましょう。拙速(せっそく)という言葉があります。意味は「出来は悪いけれど早く完成すること」。その反対は巧遅(こうち)。「出来はよいが、完成が遅いこと」です。2つの言葉でわかるのは、作品の出来栄えは作業の速さだけで計れないということ。このことをまず心に留めておきましょう。
もちろん、一番まずいのは「下手な上に完成が遅いこと」。でも、あなたは心配いりませんね。どんなに出来が悪くてもセッソク! これは武器になりますよ。だって、作品がイマイチでも、時間と材料が残っていればもう一度作れる。チャンスが2倍、3倍になりますし、ゆっくり考える時間も持てます。
そう、相談者さんのスゴイところは「私ってこれでいいのかな」「時間をかけた作品にあるものが、私のにはないかも」と、深く考えているところです。実はこの不安、あなたの素早さが生んだ余裕から生じているのです。絵をゆっくりしか描けない子(私もそうでした)は描き終えるだけで精いっぱい。考える余裕などありませんから。
ですから、相談者さんは心配があれば、残った時間を生かして、もっとよいものに挑戦すればいい。感性も理性もあるあなたなら、必ずや素晴らしい作品を作れますよ。
ところで、私は小さいころから、無口、おしゃべり、無口、おしゃべりと、何度か性格が変わりました。理由は色々ですが、白と黒のように全く反対になったのです。当時の私はこれがイヤで、両方混ざって灰色でいられたらいいのにと思っていました。
でも、今はその経験が役立っています。お芝居で任される役が明るい性格でも暗い性格でも困ることはありません。どちらもよーく知っているからです。
だから相談者さんも、今のまま突っ走るのもよいですが、たまにはゆっくり物事に取り組む時期があってもよいと思いますよ。「私ってこうかな」「どうなんだろう」と、自分とたくさん対話をしながら、大人になってください。そして大人になってからも時々対話をして、自分と仲良くしてくださいね。大人になると忘れちゃう人が多いみたいですから。
[NIKKEIプラス1 2017年2月11日付]
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