余計なひと言 言わずにいられません
女優、ミムラ
言わなければいいのに、つい余計なひと言をいう自分に悩んでいます。たとえば家内に「片づけて」と言われると、片づけ嫌いなこともあり「片づけへんでも死なへんわ!」と言い返してしまうのです。どうしたもんでしょう。(大阪府・50代・男性)
私からすると、これは少しうらやましい悩みですね。大阪にお住まいの相談者さん、この言葉のやりとりは関西の文化的一面でもあるのではないですか。
あなたのひと言が本当に余計なのか考えてみましょう。先日、京都撮影所の衣装部屋で、帯締めを手伝ってくださったNさんに、後からやってきた衣装さんが「ああ、Nさん、えらいすんません」と声をかけたときのこと。Nさんが返したのは「いえいえ、構いますぅ」という言葉でした。私が思わず笑うと「ここで『かまへん』言うたらオモんないやろ」とニッコリ。Nさんの言葉は余計なひと言といえる。こういう気の利いた会話の習慣って、関東にはあまり無いもので私は憧れています。
ですから、きっと相談者さんのひと言も、ある程度までは日々のコミュニケーションのスパイスとして、良いものなのだろうと思います。
ただ、相談者さんは行き過ぎだと感じている。さて、改めるにはどうしたらいいか。言葉遣いは日ごろから言い慣れているほど修正が難しい。だったら、言葉遣いのルーティンを変えてみてはいかがですか。
例えばテンポ。相談者さんが余計な一言をいうシチュエーションは、嫌いなことをやれと言われてカチンときたときでしょう。ある研究によれば、怒りが持続するのは長くて約30分、瞬発的なものなら6秒だとか。ならば、カチンときたら6秒待って返答すれば……。いやいや、会話中に6秒も返答がないなんて事故ですね。関西では間違いなくツッコミを入れられそう。
とはいえ瞬間的に反応せず、少し考えることを意識すれば、ルーティンが変わり、ひと言も改善しそうです。沖縄の言葉とか、外国語で話すような気分で対応したら、別人のようなひと言を返せるはずです。
そうそう、あなたの望む姿を演じてしまえばいいのです。「余計なひと言を言わない余裕のある自分」でも、「6秒も返答が凍るぼけ役」でもいい。身近な人をモデルとして、まねてみるのもありです。まずは10分間、あなたの望むまま、その役を演じてみてください。そもそも人は、多かれ少なかれ日常生活で演技をしているもの。あなたも意外なほど簡単にできると思いますよ。これを何度も繰り返してあなたの神経回路に新しい習慣を上書きできたら勝ち!
実は私もこの方法で不要な癖をいくつか直しましたが、自分をだます一人遊びのようで楽しいですよ。遊び心を持って真剣に取り組むのが成功への近道。今も、内緒で3つの癖を矯正中です。お互い頑張りましょう!
◇ ◇ ◇
[NIKKEIプラス1 2017年1月14日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。