新米パパに「助っ人」 アプリがイクメン育成応援
「最初は何をすればいいか分からなかったが、具体的にやるべきことが理解できた」。東京都内に住む1歳半の息子を持つ男性が頼りにするのは、アプリ「夫婦でクリアする イクメン育成ミッション30」だ。
新米パパはどのタイミングでどんなことをやればいいのかも分からない。妊娠中や出産直後の女性がストレスを感じないで済むよう男性がサポートするコツを伝授してくれるアプリだ。
出産前から生後1年の期間を3段階にわけて、それぞれ夫がやるべきことを例示する。例えば「ママがオムツ替えをしている間にミルクを作れば感謝される」といった具合だ。アプリを開発するマジック・タッチ(東京・新宿)の谷口幸路社長は「女性目線で夫にしてもらいたい内容を盛り込んだ」と語る。
ベネッセホールディングスの「たまひよ 妊娠・育児の赤ちゃん応援アプリ まいにちのたまひよ」はダウンロード件数が40万を超える人気アプリだ。出産予定日を入力すれば、「そろそろ胎動が聞こえます」などその時点の胎児と母体の状況を毎日掲載する。
「重い荷物は男性が持ってあげましょう」「女性がイライラしているときはマッサージをしてあげましょう」など男性向けのアドバイスも多い。
アプリ担当の野村麻美子さんは「妊娠や出産で女性は体調や精神面で影響を受ける。男性もそんな状況を知ることが育児参加の第一歩になる」と話す。
ベネッセの別のアプリ「たまひよの泣きやませ【泣きピタ!】」も子育て中のパパの手助けになりそうだ。大勢の母親の意見をもとに集めた子どもが泣きやみやすいとされる音を流す機能を持つ。
自治体もアプリ開発
自治体もイクメン支援にも乗り出している。鳥取県のアプリ「お父さんのための子育て応援手帳」は育児のイロハをまとめたノウハウ本のような内容だ。地元密着情報だけでなく、県民以外も十分に参考になる。
妊娠中から6歳まで4つの時期に分け、お風呂や離乳食などアドバイスを発信する。いつごろ寝返りをするかなど発達状況の解説のほか、出生届など出産後必要な手続きも整理して紹介している。
紙の冊子版もあるが「手軽にみやすいようアプリ版を作った」(子育て応援課)という。少子化や過疎化に直面しており、イクメン支援を通じて地域の活性化を目指している。
育児や家族関係について気軽に相談できる"パパ友"が欲しい――。そんな人におすすめなのがイクメン交流サイト(SNS)アプリ「パパログ」だ。日々の育児活動を写真やコメントを付けて日記のように投稿できる。参加者の投稿が時系列で表示され、他のユーザーの投稿に意見も送ることが可能だ。
アプリはIT(情報技術)業界で働く父親7人で結成する「パパログ事務局」が開発した。育児を共通テーマにすることで、気兼ねなく子育ての悩みを言い合えるという。事務局代表の松本和仁さんは「共通の悩みや喜びを知ることで、育児の意欲向上につながる」と語る。
「夫婦の会話増えた」
もちろん、子育ては子供の性格や発達状況によって千差万別。アプリがすべての解答を用意してくれるわけではない。それでもこうした情報源を活用すれば、夫婦や家族で子育ての喜びや悩みを素直に話し合えるかもしれない。
育成ミッション30アプリを使う東京都内の自営業の男性は「夫婦で話すことが増えた」と話す。ママたちも、子育てに戸惑う夫にアプリを教えて意識改革を後押ししてみたらいかがだろうか。
(証券部 栗原健太)
[日本経済新聞夕刊2015年2月19日付]
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