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真情あふれる「2つ目の窓」 河瀬監督4度目のコンペ

カンヌ映画祭リポート2014(8)

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NIKKEI STYLE

河瀬直美はカンヌにめでられた監督である。コンペ出品は今回で実に4度目。今村昌平が5度、大島渚が4度、北野武が2度だから、カンヌではそうした巨匠たちと並ぶ存在感ということになる。昨年は日本人監督として初めて審査員も務めた。

死と向き合いながら成長する少年と少女の物語

20日、いよいよ河瀬直美の登場である。世界の報道陣と向き合う公式記者会見でもすっかり場慣れしていて、堂々とした受け答えだった。

「2つ目の窓」は奄美大島の自然の中で、死と向き合いながら成長する少年と少女を描く物語である。質問もその東洋的な死生観を問うものが多かった。

――なぜシャーマン的な映画を作ったのか。

「8年前に自分のルーツが奄美にあると知り、6年前に奄美を訪ねた。そこで曽祖母がシャーマンのようなことをやっていたと知った」

――あなた自身の死に対する態度は。

「人間は必ず死ぬ。でも必ず誰かから生まれてきた。人間は命を生むことでつながっている生き物だ。現代は世界に自分が一人きりという感覚に陥りがちで、何かとつながっているという感覚がなくなっている。奄美は死をネガティブなものと考えていない。死は『永遠の里帰り』と考え、そうすることで安心して現世を生きられると考えている。そういう考え方に敬意をもっている」

「自然の中で生きる人間の強さを表現」

――自然の力についてどう考えるか。

「自然は美しい。同時に怖さも存在する。日本では3年前に起きた東日本大震災でいまだに故郷に帰れない人がいる。そんな自然の脅威に耐えて生活する人とは何なんだろう。波はすべてを奪うが、風雪に耐えて、そこに種をまく人がいる。この映画では自然の中で生きる人間の強さを表現した」

主人公は16歳の少女・杏子(吉永淳)と少年・界人(村上虹郎)だ。

杏子の母・イサ(松田美由紀)は「ユタ神様」と呼ばれる霊媒師だが、病を患い死期が近い。「神様は死なんやろ」と界人は言うが、杏子はやりきれない思いをぶつけてしまう。

界人の母・岬(渡辺真起子)は独りで息子を育ててきた。母に男がいることに界人は気づいており、汚らわしいと思っている。夏祭りの夜、その男の水死体を見つけた界人は激しく動揺する。

河瀬自身の人生観を色濃く反映

母の死を何とか受け止めようとする杏子は「セックスしよう」と界人を誘う。母という女を許せない界人は拒む。界人は小さいころに別れた父・篤(村上淳)を東京に訪ねる。

幼いころに父と別れ、養母に育てられた河瀬自身の感情が、この物語に反映しているのは間違いない。父を捜し求める界人の思い、母の不在に揺れる杏子の思い。どちらも河瀬の初期のドキュメンタリー「かたつもり」「につつまれて」の中心的な主題である。

苦悩する子どもたちを大人たちは温かく見守りながら、人生を説く。イサは「死ぬことはちっとも怖くない。お母さんの命は杏子の命につながっている」と諭す。篤は「生きることは簡単ではないが、シンプルだ」と言って銭湯で背中を流す。

そんな大人たちの言葉もまた河瀬自身の現在の人生観を色濃く反映している。パーソナルな真情あふれる作品なのだ。

「カンヌの観客から過去最高の共感」

そんな私的な感情を、奄美の自然と風物の中に溶け込ませ、普遍的なエモーションへと昇華させた点がこの作品のポイントだろう。波がうねり、雲が流れ、山は芽吹き、海は青い。ヤギを殺し、太鼓を鳴らし、三線を弾き、島唄をうたう。山崎裕の撮影がみずみずしい。海中を裸の杏子と界人が泳ぐシーンはこの上なく美しい。

奄美の住人たちとプロの俳優たちを共演させた点も、ドキュメンタリーとフィクションを融合させる河瀬の真骨頂だ。河瀬は俳優に対し「息づかいが限りなく近づくように」と1カ月以上も島に住まわせ、役になりきらせたという。

上映後、河瀬は観客の反応について「過去4度コンペに選出されたが、これほどの共感を受けたことはなかった。最高のものだった」と語った。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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