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家族のひび割れに迫る ジェイラン、エゴヤン、オストルンド

カンヌ映画祭リポート2014(4)

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NIKKEI STYLE

どんな家族にも小さなひび割れはあるだろう。日々の雑事にかまけて忘れていても、いざ家族だけで向き合った時に、その裂け目が露呈する。例えば雪の中に閉ざされてしまったときに……。

「ウインター・スリープ」 トルコ舞台にした家族の愛憎劇

16日にコンペ作品として公式上映されたトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督「ウインター・スリープ」(冬ごもり)は、トルコ東部のアナトリアを舞台にした家族の愛憎の物語である。

アナトリアといえば岩肌を削って建てられた洞窟(どうくつ)のような住居がよく知られている。この映画の主人公である元俳優が営む小さなホテルもそんな洞窟ホテルの一つだ。主人公は妻、姉と共に家族でホテルを切り回している。日本人を含め世界から観光客がやって来るが、高地の山肌にへばりつくようにたっているので、冬になると雪に閉ざされる。

雪に閉ざされた家は逃げ場がない。関係がぎくしゃくしている若い妻や、最近離婚した姉との対立はちょっとしたことで深まってしまう。山間の小さな村の人間関係も同様だ。近所に住む貧しい少年の家族と主人公たちの感情の行き違いが、なかなか埋まらない。

ジェイランはそんな閉ざされた空間の中で、ささくれだった会話と波立つ感情の渦を、淡々ととらえ続ける。冬ごもりする空間はアナトリアという土地に根ざしたものだが、そこに渦巻く愛憎は人間存在の根底に横たわる普遍的なものだ。ジェイランの長回しのカメラはそこに迫っていく。濃密な時間と濃密な空間をとらえ、3時間16分の長尺だがまったく飽きさせない。

世界の映画祭で高く評価されていても、日本で作品が1本も劇場公開されていない監督は少なくない。カンヌ映画祭の常連で、2011年に前作「昔々、アナトリアで」でグランプリを獲得したジェイランもその一人だ。新作はパルムドール候補となるだろう。

「ザ・キャプティブ」 人間関係の謎に迫るサイコスリラー

家族のひび割れを繊細にとらえるという点では、16日に公式上映されたカナダのアトム・エゴヤン監督「ザ・キャプティブ」(人質)も興味深い作品だった。こちらはサイコスリラー仕立てだが、やはり雪が降り積もるナイアガラの滝近くの小さな町の物語である。

造園業者の夫とホテルの客室係の妻には8年前に誘拐され姿を消した娘がいた。事件のために心に傷を負った夫婦だが、娘の生存を示すサインが次々と現れる。警察が動きだし、家族の心をいたぶる犯人たちに迫る。

一種のミステリーなのだが、犯人たちが娘を監禁している状況は冒頭に明示される。犯罪が謎なのでない。家族の関係、人々の関係の方が謎なのだ。いったい彼らは誘拐事件をどう受け止め、互いをどう考え、どう人生を引き受けているのか?

エゴヤンは1997年に「スウィート・ヒアアフター」でグランプリを獲得した。雪に閉ざされた村で起きたスクールバス転落事故の訴訟のため、弁護士が村の人間関係に分け入っていく。事故や事件そのものの謎でなく、人間関係の謎に迫るという点は、新作と通底する。エゴヤンは記者会見で「人生の過ちが生み出す罪悪感が私を魅了した。人は誰も悔恨の念をもって生きている」と語った。

「ツーリスト」 夫婦の5日間の神経戦、長回しで冷徹に表現

もう一本。18日にある視点部門で上映されたスウェーデンのリューベン・オストルンド監督「ツーリスト」も雪に閉ざされた家族の物語だった。オストルンドは2011年、北欧の都市の少年たちのカツアゲ行為をドキュメンタリータッチで描いた「プレイ」を監督週間に出品。同作は東京国際映画祭でも上映された。

山上のリゾートにスキー旅行に来た夫婦と幼い姉弟の5日間の休暇を追う。1日目からさんざん滑って楽しい休暇になるはずだったが、2日目の朝、異変が起こる。食事をしていたレストランのテラスが、人工雪崩に直撃されたのだ。幸いけが人はなかったが、夫が妻子を置いていち早く逃げたことで、妻は夫に不信感を募らせる。

リゾートには色々なカップルがいる。現地で男を調達した女もいれば、不倫カップルもいる。妻は夫の携帯電話が鳴るのが気になり始める。夫婦の不仲を見て、子どもたちの機嫌も悪い。妻のいらいらはさらに募る。他の旅行者と食事をしていても、つい夫を責めてしまう。せっかくの旅行が台無しだ。

5日間の夫婦の神経戦をオストルンド監督は、まるで動物の観察映画のように長回しのカメラで冷徹に撮り続ける。見ていてつらくなるが、生きている現実とはこういうものだろう。雪による隔絶は我々をいや応なしにそばにいる人に、そして自分自身に向き合わせるのだ。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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