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アフリカで高級バッグ作り 海外協力隊から転身 女子力起業(7) 編集委員 石鍋仁美

2013/11/18

 流行が終われば捨てられるのを前提にした化粧品。これは自分のやりたいものづくりじゃない。そう気づいたデザイナーの鮫島弘子さんは、青年海外協力隊の一員としてアフリカのエチオピアに旅立つ。この地で知った素材を生かし女性用の高級バッグを作ろうと、自分の会社「アンドゥアメット」を昨年設立。現地工場も稼働した。いま予約待ちの人も多い人気商品になっている。

自らデザインした高級バッグをエチオピアで生産する鮫島弘子さん

■エチオピアの色彩感覚の日本の伝統ミックス

 商品の一例が「Big Hug(ビッグ・ハグ)」。「世界最高峰」の素材と自負するエチオピア産の羊の革を使った、ふわふわと柔らかいトートバッグ。「ぎゅっと抱きしめると、絹のようになめらかな肌触りと革の香りを楽しめる」と鮫島さん。1泊の旅行にも使える大きさだが重さは950グラムと「同じサイズの一般的な牛革バッグの半分以下」だそうだ。

 ハンドル部分をよく見ると、モザイクのような装飾がある。これが鮫島さんのブランド「アンドゥアメット」のシンボル。日本の伝統工芸である寄せ木細工に着想を得て、多彩なエチオピアの羊の革を重ねて作った。「エチオピアの職人の色彩感覚と日本の伝統工芸の融合」だという。価格は1個10万2900円(税込み)だ。

 現地の素材や文化と日本文化の融合は鮫島さんのものづくりの大きなテーマ。もう1つ、こちらも羊革トートの「Gift(ギフト)」は大きなリボンがついている。「日本の着物の帯結びにインスピレーションを得たデザイン」だ。価格は9万1350円(税込み)となっている。

 ものを作ること、絵を描くことが好きで現代美術を専攻。学生時代、起業やビジネス、数字には「全く興味がなかった」。アーティストでは生活するのが難しそうだとデザイナーの道を選び、国内の化粧品メーカーに就職した。小さな会社で、商品の企画から価格設定まで任された。

■自分は“きれいなゴミ”をつくっているだけかも……

 「最初は楽しかった」。若い女性向けに、次々に新商品を考える。それが半年後には形となり、ドラッグストアや雑貨店に並び、「かわいい」と言われ、売れていく。その繰り返しの中で、「自分は何をやっているんだろう」という疑問が膨らんでいった。

 価格は1個1000円くらい。1シーズンの使い捨て商品を、季節ごとに何十、何百と送り出す。例えば口紅なら、ふつう3カ月で使い切ることはない。そうした使いかけの商品を捨てさせるために、色や形を変え新商品をどんどん出す。売れ残りの商品も、もちろんゴミになる。

 すでに10個の口紅を持っている人に、11個目の口紅を売る仕事。展示会に行けば、業界全体では無数の新商品が並んでいる。「自分は『きれいなゴミ』を作っているだけじゃないか」。仕事への自信がなくなっていった。

主力商品であるバッグのほか小物も用意

 しかし「流れるプールと一緒」で、会社に身を置く限り、1人だけ逆方向に泳ぐことはできない。もんもんとした日々を過ごす中で、青年海外協力隊に関心が向いた。求められる技能の中に「デザイナー」があった。求めている国は「エチオピア」。予備知識はなかったが、思い切って飛び込んだ。「途上国のために何かしたいというよりも、今のものづくりに疑問を感じ、あるべきものづくりの姿を模索したかった。それが私の出発点なんです」。派遣先は政府の観光関連の団体だ。

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