MONO TRENDY

ブームの予感(日経MJ)

綿ほぐしながら酒を一杯 糸紡ぎバーにはまる人々 都内に登場 会社帰りに

2013/5/19

 国産の綿花から種を取り除き、綿をほぐし、手で紡ぐ。こんな糸紡ぎカフェ&バーが昨年11月、東京・世田谷に誕生した。お客さんはコーヒーや酒を飲みながらひたすら綿を紡ぐだけ。作業を繰り返すうちに、手先の感覚に神経が集まり、頭の中から雑念が消えてゆく。単純な作業の反復と綿の触感がストレスのたまりがちな人々の心をゆっくりと解きほぐす。
カウンターでは客がグラスを傾けながら綿を紡いでいる(東京都世田谷区のTokyo Cotton Village)

 平日の夜9時すぎ。東急田園都市線用賀駅から徒歩5分の「Tokyo Cotton Village(トウキョウコットンヴィレッジ)」に会社帰りの常連客が次々と現れ、カウンター席が埋まった。ビールやカクテルを飲みながらしばし雑談をすると、やおら綿を手で紡ぎ始めた。みな黙々と手を動かし、店内にはBGMだけが静かに流れる。

 店主の冨沢拓也さん(44)が環境関連のイベントで綿と出合ったのは6年前。かつて日本は綿布の輸出量が世界一だったこともあるが「今は綿栽培が絶滅寸前と知り、守りたいと思った」。2008年から畑で綿花を栽培、収穫、糸にして作品にする活動に取り組む。

■コーヒー500円・生ビール750円、綿は無料

 「国産綿に触れ、手紡ぎの楽しさを体験できる拠点がほしい」と店を設けた。コーヒー(500円)や生ビール(750円)などを注文すれば綿などの材料費は無料だ。

 昭和初期に使われた「綿繰り機」に綿花を投入、取っ手を回すと種を取り除き、ローラーから綿だけが送り出される。羊毛用のブラシを使いふわふわの綿にする。

 次に綿を親指と人さし指でつまんでより、中指と薬指で挟んでねじれを止める。よっては止め、よっては止めを繰り返す。手を離せばよりが戻ってしまうので注意が必要だ。糸状にしてコマに巻き付け、コマの軸を回して紡ぐ。綿糸にすれば、織ったり編んだりしてコースターやミサンガなどができる。

 常連客に手紡ぎの魅力を聞いてみた。女性会社員(30)は結婚する友人のために仲間と糸を紡ぎ、ランチョンマットを2枚作った。「何も考えずにただ黙々とやるって気持ちいいですよ」

 「何よりふわふわの感触が最高」と話すのは板垣千夏さん(30)。昨年郷里の親に種を送って育ててもらった綿が収穫できたので「糸にしてコースターを作り、親にプレゼントする」。谷川和大さん(42)は「不思議と飽きないし、心をリセットできる大切な時間です」。店内には綿が醸し出すふわっとした温かな時間がいつも流れている。

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