「頑張れ」と言わない 校長が説く自己肯定感の高め方「これからの学びのカタチ」 後編

弱みを見せることで対話が生まれる

それから、日本の教育がダメだなんて憂いたりしないでほしいです。勝手に理想を描いて勝手に不幸になるなということです。待ちの姿勢にならないで、校長が動いてくれないから、誰かが動いてくれないから、組織がダメだからと思わないでほしい。現実を憂いたりしないということを子供たちに教えたいのであれば、自分が組織の現実を憂いたりしないで、何が課題なのかを自分の目で何度も繰り返して見つめ直す訓練をしていく。そして行動に起こしてみる。それでうまくいかなければ違う行動を起こしてみる。これを繰り返していくということですね。そういう教員であってほしいと思います。

生徒と談笑する日野田直彦校長

日野田 生徒が分からないと言っていることを理解してあげられる先生、また、苦手なことにでも果敢にチャレンジする先生の姿を生徒は見ています。本当の意味でのやさしさを持っていて、自分自身もつらい思いをしていたりする先生にこそ、生徒は共感できます。

偉そうな先生は鬱陶しいじゃないですか。先生が弱みを見せると、生徒も弱みを見せてくれます。先生がうそをついて強いふりをすると、生徒も強いふりをして、お互いにどんどん心の壁が深まっていって、対話ができなくなりますから。共感と共有ということをテーマに学び続けていただける先生だったらいいなというのを、うちの学校で教員採用するときには必ず言い続けているところですね。

桜井 ありがとうございます。ではまとめとして、コロナ時代の学びと教育について、全体を通じてのメッセージをお願いします。

工藤 僕は麹町中から横浜創英に来てまだ2カ月なんですけど、この2カ月間で本当に僕自身もいろいろな学びがありました。麹町でもいろいろなことを学んだんですけど、あらためてこの新しい環境に来て、ああやっぱりできるんだと。教育っていうのは、人ってすごいなということを感じたんですね。

コロナで大変な状況の中で、1人1台のパソコンもなく、教室のWi-Fi環境もない。それでも、1カ月もたたないうちにオンラインですべての子供たちと結ばれて、1600人以上の子供たちと二者面談が済んでいる。しかも、日に日にレベルアップしていく。これからのウィズコロナというのは、教職員一人ひとりの対応力を組織の対応力に変えていくことが求められていると思います。僕はこの2ヶ月で確信しました。これを多くの学校で、自分事にして展開していってくれたらうれしいと思います。

日野田 かつての日本には、米国のシリコンバレーのような雰囲気があって、30%程度の完成度で挑戦し、とりあえずフィードバックをもらおうと、そして、どんどん素早くつくっていこうという強さがありましたよね。今はどうでしょう。パッションと知識、マインドセットをなぜか社会が捨ててしまっているように見えるんです。

でも、例えば僕が以前校長を務めていた大阪府立箕面高校の卒業生の子が「あたらしい高校生」(山本つぼみ著 IBCパブリッシング)という本を書きました。それを読むとよく分かるのですが、本当に無限の可能性を持った中高生や大学生がたくさんいる国です。ウィズコロナの中であっても、皆でもっと応援して、そのチャレンジを支えていけるような国の政策や自分自身の行動ができたらいいなと思い続けています。

工藤勇一氏(学校法人堀井学園 横浜創英中学・高等学校 理事・校長)
東京理科大学理学部 1 部応用数学科卒業。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長を経て、2014年4月から2020年3月まで千代田区立麹町中学校 校長を務める。麹町中学校在職中、学校教育を本質から見直し、学校運営に全教職員、生徒・保護者を当事者として巻き込みながら、形骸化した教育活動をスクラップし、再構築した。定期考査や宿題の全廃、固定担任制の廃止、服装頭髪指導の廃止などを行う。
(主な著書)
学校の「当たり前」をやめた。―生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革―(時事通信社)が10 万部超のベストセラー
日野田直彦氏(武蔵野大学中学校・高等学校 校長兼 武蔵野大学附属千代田高等学院 校長)
帰国子女。同志社国際中高、同志社大学卒。塾ではトップ講師として、学校では私立学校の新規立上げなどに携る。2014年大阪府の公募等校長制度に応じ、大阪府立箕面高等学校の校長に着任(当時全国最年少36歳)。着任3年目には海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出す。2018年武蔵野大学中学校・高等学校の校長に着任。定員を大幅に下回る厳しい経営状況であったが、グローバル・イノベーション教育を展開し、2年で定員を充足し、さらなる発展を推し進める。2020年より武蔵野大学附属千代田高等学院の校長を兼任。
(主な著書)
なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか! ?(IBCパブリッシング)
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