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まるでスポーツ競技 兄弟で目指す「クイズ王」への道

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NIKKEI STYLE

 中高生や大学生の間でクイズが大きな盛り上がりを見せています。U22は「日経 クイズのとびら」を通じ、クイズ文化を後押しする様々なコンテンツをお届けしていきます。

相手より一瞬でも早く解答ボタンを押して正解を答える競技クイズ。プレーヤーらが駆け引きを交えながら戦う様子はブレーンスポーツそのものだ。全国レベルのクイズプレーヤーになることを夢見て奮闘する、ある兄弟を取材した。

全国でも有数のクイズ強豪校がひしめく埼玉県。開智中学・高等学校(さいたま市岩槻区)のクイズ研究会は2018年に活動を開始したばかり。研究会を引っ張るのは、高校2年の兄、饗庭雅大さんと、弟で中学2年の尚進さんの兄弟だ。国内最大規模の早押しクイズリーグである全日本クイズリーグ(AQL)の埼玉予選通過まであと一歩のところまで力をつけてきた。

先にクイズにはまったのは、弟の尚進さんのほうだった。小学2年のときにテレビで見た高校生クイズがきっかけだ。開成高校(東京都荒川区)が史上初の3連覇を達成した回だった。「クイズってすごい! なんて格好いいんだ」。その日から、クイズプレーヤーが尚進さんのヒーローになった。番組を録画して50回以上は見た。クイズプレーヤーになりきって自分が優勝する場面を想像の中で何度も思い描いた。

中学受験の勉強を4年生から始めた尚進さん。目指すのはもちろん、クイズ最強校の開成。ところが、結果は不合格。クイズが強いほかの学校も受験したが、いずれも及ばなかった。2018年の冬、合否発表の帰り道、尚進さんは人目もはばからずに涙を見せた。唯一受かっていた開智には、クイズ研究会はなかった。

「弟は人前で泣くようなタイプではないのに、あんなに泣いていて…。自分のこと以上にショックを受けました」。開智の中学3年だった兄、雅大さんは決心する。「尚進が入学してくる4月までに、オレがクイズ研究会をつくってやる!」。

行動派の雅大さんは早速動き出す。ふと手にした学年だよりの中にあった言葉に目が釘付けになった。「クイズ研ができないものだろうか。わりと本気」。書いたのは、数学の森下哲嗣教諭。新年の抱負を各教諭が述べるというお題に、森下教諭は東大出身のクイズプレーヤーらが活躍するテレビ番組「東大王」を引き合いに出していた。雅大さんは膝を打った。「これだ!」

「先生、クイズ研つくりたいんですよね? 僕もやりたいんですよ!」。雅大さんはすぐに森下教諭のところに飛んで行った。当の森下教諭がそこまで意識的に書いたものでなかったとしても、若い時分の人生はほんの少しのきっかけで前に進んでいく。

自腹で早押し機を買った先生

思いに共鳴した森下教諭は自腹を切って、簡易型のクイズの早押し機を購入した。理解のある教諭と、声をかけて集めた何人かのクイズ仲間、それにクイズ早押し機という土台を築くことはできた。兄は弟に言った。「クイズ、学校でできるよ」。

2018年春、尚進さんは開智に通い始めた。入学直後の新入生は忙しい。学校行事などがびっしり。5月から6月ぐらいになり、尚進さんはクイズの集まりに顔を出し始めた。ただし、この時点ではまだ現在のような「本気モード」にはなっていない。その後も様々な出会いが、兄弟を変えていく。

開智には、中高一貫と高校からの高等部が別々に存在している。饗庭兄弟は中高一貫だ。実は、普段あまり交流のない高等部に既にクイズ研究会があったことが判明したのだ。森下教諭が早速訪ねると、創設者の高2の女子生徒が応対してくれた。女子生徒は「ガチ勢」と呼ばれる、いわゆる本気でクイズに取り組む側だった。高2の文化祭でクイズを引退するつもりだったところに、中高一貫から突如やってきた何やらやる気のありそうな面々。女子生徒は喜び、学生クイズを取り巻く事情を惜しみなく教えてくれたという。

7月。尚進さんは都内の強豪校が主催する「例会」という早押しクイズの練習会を見学した。女子生徒ら開智の高等部のメンバーも参加していた。「クイズの強豪校の人たちが集まっている場にはじめて行った。高校生クイズの番組で出ているような問題も出されて、なんとなく雰囲気をつかんだ」。これがいわゆる競技クイズとの出会いになった。

中高一貫組と高等部組はLINEのグループでつながり、森下教諭も加わってできた事実上の開智クイズ研究会は総勢10人ほどにまで膨らんで、賑やかな集団になった。「今日、練習やります」というメッセージが回ってくると、森下教諭が学内の会議室などをおさえてみんなでクイズに励んだ。

例会は、主催校にもよるが、まずペーパー試験のようなクイズがあり、そこを上位で通過した者だけが早押しクイズに進める形式が多い。ペーパーで落ちることを、クイズ業界の用語で「紙落ち」という。週末はあらゆる例会に顔を出すようになった尚進さんだが、「今日も紙落ち、また紙落ち、という日々でした」

そんな日々だったが、学内の縁がきっかけで、全国屈指の社会人クイズサークル「玉Q」の練習に参加できることになった。「名前は聞いたことがあった。遊び感覚で行ってみたらえらいことになって」。1日7時間、ものすごい勢いで早押しクイズをこなしていく。尚進さんが答えられたのは、7~800問のうち1~2問だった。「全然押せない。異次元すぎた」。本気の競技クイズの迫力に、心のスイッチが押された。

「オレがつくってやる」と兄が土台を築いたクイズの世界で、弟は一気にアクセルを踏み込んで加速していった。弟は様々な例会に参加しては、そこで使われた問題集を買い込み、わからなかった問題をエクセルなどでリスト化してその日のうちに覚えこもうとする。「もう鬼のようですよ」と兄の雅大さんは笑う。リストは既に数千問にも及ぶ。

兄弟で出られる最後の大会

年が明けて2019年初め。開智のクイズ研究会はAQLの埼玉予選に参加した。初参加の結果は1勝しかできず、9校中最下位だった。それでも腐らず、兄弟を含めた全員が実力を磨いていった。特に尚進さんは別の中学生の大会で準決勝に進出。あの受験で失敗してしまった開成の生徒から、強豪校のクイズプレーヤーのみが集うLINEグループに誘われるほどになった。

19年春からは、兄が高2、弟が中2となり、兄は大学受験の勉強が本格化してくるため、早押しクイズの練習に割ける時間は次第に少なくなっていく。「受験勉強で知識は増えていくから、それで補えればいいかなと思っていました」(雅大さん)。一方の尚進さんはますますクイズにのめり込んでいった。

尚進さんは言う。「クイズのいいところは、スタートラインがみんな同じという点だと思うんですよ。スポーツやアートは、生まれながらの才能とかも大きく関係しそうじゃないですか。でもクイズは、知識を覚えることと、どこで押せば勝てるのかを研究する、つまり努力した分だけ強くなるんです。同級生のものすごく強いプレーヤーも、ずっと努力してきているんですよね」

20年1月のAQL埼玉予選。開智クイズ研究会は初戦を落としたものの、強豪を破るなど勢いにのり、決勝につながるプレーオフ進出まであと一歩のところまでいった。結果は9校中4位。前年の最下位からは大きく前進した。

中2ながらキャプテンの大役を引き受けて出場した尚進さんは「苦しいときにみんなへのフォローがキャプテンとして足りていなかった。悔しくて家で少し泣いたりもしたんですけど、でも、次につながるいい戦いだったと思います」と話す。「僕は来年の大会は受験で出られないから、これが兄弟で出られる最後の大会でした。だからどうしても勝ちたかったです」と雅大さん。そのうえで、弟のことを「みんなをひっぱるプレッシャーは大変だったと思います」と気遣った。

さまざまなつながりに導かれるようにクイズの世界に本格的に足を踏み入れた「クイズ兄弟」。目指すのは「クイズ王」だ。

(桜井陽)

各クイズ団体のとっておきの1問を表彰する「日経 1問グランプリ」(3月24日に発表予定)に寄せられた問題についても、「日経 クイズのとびら」で順次掲載していきます。

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